愛知

<なごや市議選 激戦区をゆく>(中)

2015年4月8日

◆河村市政、継続か転換か 東区

 訴えのボルテージがさらに、上がった。

市政の是非も争点となり、河村たかし市長(左)も市議選候補者の応援に駆け回る=名古屋市東区で

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 「この東区で、減税日本を守れるかどうかなんです」

 衆院議員や県議を務めた佐藤夕子が七日夜、神社の集会所で開いた演説会。「市長のいいところを推進し、だめなことにくぎを刺す役割が必要。庶民革命を、ここで止めるわけにはいかないんです」。集まった八十人に声を張り上げた。

 地域政党「減税日本」代表で、市長の河村たかしの自宅兼事務所がある東区。河村は、中選挙区時代から数え、東区を含む衆院の選挙区で五期連続当選。市長転身後に行われた二〇〇九年八月の衆院選では、河村を政治の師と仰ぐ佐藤を担ぎ、当選させた。当時、県議だった佐藤の後釜に座ったのも、また減税日本。いわば河村の「牙城」だ。

 その東区でも、市全域に吹いた河村旋風がやんでいる。この四年、所属議員の政務調査費(現在は政務活動費)の不正受給など不祥事が相次ぎ、看板はすっかり傷ついた。

 一二年の衆院選で佐藤が落選。続いて党幹部を擁立した昨年十二月の衆院選も惨敗。東区ですら、当選した自民はもとより、民主にも及ばず、三位に沈んだ。

 揺らぐ足元をもう一度固めるため、知名度のある佐藤が市議選に名乗りを上げた。

 そのあおりは、前回、減税日本で初当選した近藤徳久に。四年前、告示十日前の出馬表明にもかかわらず、旋風に乗り、民主前職を倍以上の得票で退けた。当時、右も左も分からない選挙のイロハを教えてくれたのが、佐藤だった。

 今回、政治団体「生活なごや」から出馬し、その恩人と競り合うのは不本意。だが、憤りもある。

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 「県議、衆院議員に続き、市議を目指す。これは、減税が批判してきた職業議員そのものですよ」

 選挙戦では「市民を助ける男」をキャッチフレーズにした。「河村市長を助ける男、女」。そう訴える減税候補への批判を込めた。

 近藤に持っていかれた議席の奪還を目指す民主の谷弘三は三日夕、地下鉄駅近くで、サラリーマンらに呼び掛けた。

 「あの地域政党の、一連の騒動に終止符を打ち、以前の正常な市議会を取り戻します」

 東区出身。愛知3区の衆院議員の秘書を務めた経験から「地元の即戦力」をアピール。佐藤と近藤で減税票が割れることは有利に働くが、「市長や、四年間務めた議員たちの知名度は高い」と余裕はない。

 六選に向け着々の中川貴元も前回、政治の素人だった近藤に四百票近くまで迫られただけに、油断はできない。四日、神社で開いた演説会では、過去の選挙の各候補の得票数を示したボードを掲げ、「情勢は一瞬で変わる」と引き締めた。「問われているのは熱狂政治からの脱却。堅実で質の高い市政、議会運営への転換だ」

 選挙区内をくまなく回る村瀬和弘もまた、転換を訴える。「市民税の一律減税や、不要不急な大型公共事業を取りやめ、介護保険料の引き下げなど市民の暮らしと福祉を守る市政にしよう」。有権者が投じる一票は、河村市政の継続か、転換か。

 =敬称略

(北村剛史)