愛知

<県議選 激戦の現場>三河編

2015年4月8日

◆衆院選影響し自・民・維ら乱立 岡崎市・額田郡選挙区

 ◇岡崎市・額田郡 (五…7)

西久保長史60 労組顧問   民現<1>

新海正春 63 (元)市議長 自新=公

中根義高 42 会社役員   自現<1>=公

楢原伸一 59 会社員    無新

鈴木雅登 44 (元)市議  維現<1>

梅村順一 56 (元)市議  自新=公

園山康男 50 会社役員   維元<1>

 桜が満開の岡崎市に四日、大村秀章知事がやって来た。

 自民、民主、維新の各候補への応援だったが、最も時間を割いたのは園山。愛知12区選出の重徳和彦衆院議員(維新)も駆け付け、岡崎公園の花見客の中に割って入った。

有権者と握手して回る候補者(右)=岡崎市で

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 「知事とのパイプが大事なんですよ」と園山。昨年末の衆院選で自民候補を破った重徳人気にもあやかる作戦だったが、花見客の耳目は本人そっちのけで知事らに集まった。

 同じころ、鈴木は選挙カーにも乗らず、自宅から支持者に電話をかけ続けていた。翌日の個人演説会への勧誘だ。「僕自身が動員をかけないと誰も来てくれないから」。派手な露出より手堅い支持者集め。陣営幹部は「同じ維新でも園山さんとはやり方が違う。雅登は自分の立場が分かっている」。

 県内五十五選挙区のうち、維新が候補者を二人擁立したのは岡崎市・額田郡選挙区だけ。統合により定数五となった椅子を自民三人、民主一人らと奪い合う。

 自民には衆院選の雪辱戦だが、五選、六選のベテラン議員がいた前回と違い、世代交代の過渡期を迎える。

 リーダー格は最も若い中根だが、夜の集会所回りでは支持者の声に困惑していた。「今回は三人とも通さなくちゃ」と言われ苦笑い。衆院選で岡崎市の選対本部長を務めた中根への風当たりは強い。「僕だって前回補選で通っただけ。自分のことだけで必死なのに」

 だが、前回補選で中根が二位以下に大差をつけたのは事実。共に立候補し、自民でそのあおりを食ったのが梅村だった。

 二年半の浪人を経て背水の陣で臨む。人口の少ない山間部が地元のため、人が集まる街中での露出を増やす。週明けの六日朝は、JR岡崎駅前に立った。「とにかく顔を売らないと」。旧額田町議時代からつながりのある幸田町の票も頼りだ。

 梅村が駅を去った後、反対口でマイクを握ったのは新海。岡崎市議長を務めた実績が売りだが「県議選は市議選の十倍の得票がいる」と焦りを隠さない。任期途中で市議を辞職して挑む。候補者中最年長の新人であることを尋ねると「若きゃあいいってもんじゃない」と気色ばんだ。

 民主も衆院選の影響を引きずる。候補者調整で維新に譲り、県内唯一の空白区を生んで以来、党勢回復を優先。今回は議席維持のため一人に絞った。

 西久保は前回、自民のベテラン二人を抑えトップ当選を果たしたが「当落ラインまでわずか五千票。簡単にひっくり返る」と引き締めを図る。元トヨタ自動車社員で労組の組織票は堅いが「前回二人出していたら、自分は議員になっていなかった」と守りに徹する構えだ。

 そんな勢力争いとは一線を画すのが楢原。告示後、市内の観光地を中心にポスター張りに一人精を出す。「まさか、候補者本人が張ってるなんて思わないでしょう」と自嘲しながら、九日夜には唯一の個人演説会を計画。「誰も来てくれないかもしれないけど、しがらみのある人たちより気楽ですよ」

(帯田祥尚、佐藤浩太郎)

◆一騎打ち、現職陣営に危機感 新城市・北設楽郡選挙区

◇新城市・北設楽郡 (一…2)

山本拓哉 55 NPO代表 無新

峰野修  67 会社役員  自現<2>

 奥三河は、人口減少が続く東三河にあっても、とりわけ、少子高齢化が深刻だ。

 「ふるさとのために精いっぱい頑張りたい。勝たしてください」

 新城市であった三日の出陣式。自民現職の峰野は、支持者を前に土下座した。選挙戦終盤ならともかく、初日での鬼気迫る言動は、支持者にも十分に危機感が伝わった。

決起集会で、支持者と一緒に気勢を上げる候補者(中)=新城市で

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 一騎打ちとなった相手は、父親が元新城市長の山本。二〇一三年の新城市長選に出馬し僅差で敗れたが、一万四千票近くを得た。峰野の選対幹部は「相手候補の固定票は侮れない。うちは支持者の高齢化も激しい」。前回は一万七千票余を得て再選を果たしたが、「(支持者の死亡などで)千票は減っている」と分析する。

 五日夜、新城市内で開いた総決起集会。壇上には地元選出の今枝宗一郎衆院議員(自民)やJA、商工会、四市町村の市町村議が顔をそろえた。あいさつした陣営幹部は「家族や友人、ご近所に電話などで一声掛けて」と呼び掛けた。

 組織票固めに余念がない。選挙区内に三千票余あるとされる公明票に期待し、労組幹部にも接触を続ける。

 峰野陣営が警戒感をあらわにする山本だが、出馬表明は告示一カ月前と出遅れた。準備不足は否めず、市長選を戦った後援会の主力メンバーが陣営に加わったのは告示直前。支えるのは、市民グループなど勝手連的なボランティアだ。

 今回の統一選から解禁となったネット選挙。「政治を変えましょう。選挙に行ってください」。無料通信アプリ「LINE(ライン)」やツイッターを駆使して呼び掛けるのは、新城市で進む産業廃棄物処理施設の建設に反対する若い母親たちのグループ。勝手連の一つだ。

 新城市政のかじ取りにこだわる山本に、県議選出馬を決意させたのが産廃施設の存在。市内の県工業団地に建設が進むが、山本は反対運動を主導してきた。山本の出馬で、最大の争点に浮上した。

 建設場所はこども園や小中学校に近く、母親たちの一人は「話を聴いて、一緒に涙を流してくれる若い世代だけでなく、お年寄り世代も産廃のことを知り、選挙に協力してくれる」と話す。

 山本陣営が勝利の鍵と見るのが投票率。若者や支持なし層への浸透も図る。

(沢田佳孝)

 =終わり

(文中敬称略、名簿は届け出順)