愛知

報酬800万円、節約の陣名古屋市議選

2015年4月7日

 十二日投開票の名古屋市議選で、節約型の選挙運動が広がっている。河村たかし市長が議員の「家業化」に異を唱え、報酬が全国の政令市議会で最も低い年八百万円に半減してから初めて迎えた選挙戦。「軍資金が足りない」。そんなぼやきも漏れる各陣営。ウグイス嬢を頼むのをやめたり、事務所の看板を簡素化したりと、経費削減に知恵を絞っている。

 市南部で、三期目を目指す三十代半ばの男性候補の選挙事務所前。にっこり笑った候補の写真と政策が入ったのぼり旗が二本、風になびいている。四年前までは事務所玄関の両脇に、夜間も照明で照らされる立派な看板を飾ったが、のぼり旗の代用で費用を半分以下に抑えた。

 「見栄えは悪いかもしれないけど、背に腹は代えられないよね」

 選挙カーに掲げる名前の看板も、以前はアクリル板だったが、今回は安価な厚手の布製に。車から手を振り、澄んだ声で支持を呼びかけていたウグイス嬢もいない。

 選挙期間中の九日間、ウグイス嬢をフルに頼めば締めて五十万円以上かかる。今回、自らマイクを握れないときは、あらかじめ録音した訴えを車のスピーカーから流している。

 告示前のビラ配布も三回から二回に。印刷も近所のなじみの店をやめ、ネットで「全国で最も安い業者」を探して発注した。「これまでは報酬の中から四年間で選挙資金を捻出できた。今はむしろ、赤字で借金だ」と懐事情を明かす。

 市北部の選挙区で三期目を狙う三十代後半の男性候補は、四年前に使った看板を倉庫から引っ張りだした。ほかの陣営も選挙カーの装飾を簡素化したり、事務所を賃貸料が高い大通り沿いから奥に入った住宅街に移したり。

 育ち盛りの子どもがいる四十代の男性候補は、支持者らの寄付で選挙戦をしのぐ。「支えがあって、どうにかやれる状況」と漏らし、報酬半減の厳しさをあらためて感じている。

 自民、民主の中には、選挙後の報酬の見直しに言及する候補もいるが、三十代の女性候補は八百万円の維持を訴える。「節約できるところがあれば、なるべくお金をかけない選挙が理想的と思う」と話す。リース代が公費で負担される選挙カーも、普通サイズのワゴン車から軽ワゴン車に変えたという。

(社会部・藤嶋崇)

 <議員報酬800万円>2009年に初当選した河村たかし名古屋市長が800万円への報酬半減を提唱したが、市議会は数回にわたって否決。市議会の解散請求(リコール)成立に伴う11年の出直し選で減税日本が最大会派となり、市議会は全会一致で半減を認めた。ただ、期間を「当分の間」と暫定にとどめたため、市長は13年に半減の恒久化を求める条例案を提出、市議会は反対多数で否決した。今回の市議選後、報酬引き上げを求める動きが強まる可能性がある。