愛知

<県議選 激戦の現場>名古屋編

2015年4月5日

 県議選の候補者は東へ西へと飛び回り、舌戦も熱を帯びてきた。各地で展開される激戦の現場を紹介する。 =文中敬称略、名簿は届け出順

◆16年ぶり舌戦、三つどもえ 中村区

選挙カーから支持を訴える候補者=名古屋市中村区で

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 十二年後のリニア中央新幹線開通へ活気づく名駅地区や下町の住宅街を抱える名古屋市中村区。過去三回続いた無投票に終止符を打ち、実に十六年ぶりとなる選挙戦は、三つどもえの激しい争いとなった。

 「自ら身を切る議員になる。若いからこそ改革ができるんです」。三日の告示日、区を東西に貫く太閤通沿いで第一声を上げた松山。同区で県議七期を務めた父・登の地盤を引き継ぎ、初当選を狙う。

 民主の重鎮だった父が維新入りしたのは二年前。「民主支持票が失われるのは分かっている。労組の支援もない。より住民目線で訴えるしかない」と松山。活路は、父の個人後援会を通じた人脈開拓と二十九歳という清新なイメージだ。第一声の後は、沿道を埋めた支持者の列をハイタッチで駆け抜け、元気の良さをアピールした。

 一方、民主から同じく初出馬する鳴海は、同区を地盤とする赤松広隆衆院議員の秘書を十六年務め、地域をくまなく回ってきた。「自分でポスターを何百枚も張ってきた。張らせてもらった家の方の顔と名前はすべて頭に入っている」と、日焼けした顔で言い切る。

 松山の出馬で従来の民主票が割れることも予想されるだけに、陣営も必死だ。

 三日の出発式では、赤松衆院議員自ら「私の力、メンツ、根性すべてをかけて戦う」と宣言。鳴海も「政治の名門の家で生まれたわけではないが、情熱では誰にも負けない」と声を張り上げた。

 その鳴海から、松山とともに「政治の名門」と意識される寺西。だが本人は「いや、自分こそ苦しい戦いだ」と危機感を強める。

 県議を十期、自民県連会長も務めた父・学から前回無投票でバトンを受けた現職だが、「父が亡くなってもう二年。しかも、ずっと選挙をやっていないんだから、ふたを開けてみないと分からない」。

 四日には、同区内で石破茂地方創生担当相の応援を受け、少子高齢化とリニア開通を話題に「ジュニア、シニア、リニアへ対応した街づくりをする」と声をからした。「党本部の大物が来るということは、それだけ横一線ということ」と寺西。

 現職と新人、既成政党と第三極、世襲への評価…。十六年ぶりの選挙は、さまざまな審判を有権者に求めている。 (杉藤貴浩)

 ◇中村区 (二…3)

寺西  睦50(元)電通部長 自現<1>=公

鳴海 康裕39 党支部役員  民新

松山 剛士29(元)県議秘書 維新 

◆男女2人ずつ混戦は必至 緑区

地域の住民にあいさつして回る県議選候補(中)=名古屋市緑区で

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 合戦の地、桶狭間古戦場に近い名古屋市緑区の地蔵池。桜が咲き誇る池のほとりで、岡は午前九時半から花見客に頭を下げて回った。元高校教諭らしく「あいさつが人間関係の基本」と語る。

 公明が、定数一減となった北区での擁立を見送った代わりに、初めて緑区に立てた「肝いり」候補だ。

 少子高齢化が進む市内でも緑区は人口増加が続く。岡は「『つながり力』が教育や防災、福祉などの課題に向き合うキーワード」と話し、古くからの住民と新住民の融和を政策の土台に据える。

 一時間後、同じ場所に現れたのは渡辺。過去二回の選挙で推薦を受けた公明の支援はなく、今回は独力の戦い。「自分が頑張って当選するだけ。常に危機感を持ってやらないと」と覚悟を決める。

 有力な名古屋市議の二世として県議を二期務めた知名度を生かし、政権政党の一員として国、県、市とのパイプ役をアピールする。

 ここでは花見客に交じって屋台のフランクフルトをほおばる気さくな姿も。「入れば当選確実だよ」と、周囲に誘われた輪投げは二度目で成功。ガッツポーズを見せた。

 男性候補が花見会場を回る傍ら、二人の女性候補は主婦たちでにぎわうスーパーに向かった。

 中村はスタッフの女性とともに三人の「バイク隊」を結成。ピンクのコート、赤いヘルメット姿で午後一時半に事務所を出た。

 幼少期に父を交通事故で亡くし、交通死全国ワーストを続ける愛知から事故をなくすことを願う。「横断歩道で歩行者が手を挙げ、アイコンタクトでドライバーに意思を伝える『ハンドアップ運動』を緑区から全国に広めたい」

 七期務めた民主のベテランも今回は公明や共産の組織力を脅威に感じている。民主は定数三のうち二議席確保が通例だったが、候補を中村のみに絞った。

 満仲はグレーのジャケットの上に黄色のたすきをかけ、選挙カーで走り回った。

 息子二人を育て上げたシングルマザーとして、福祉や教育の充実を訴える。

 ディスカウント店前の路上では「愛知県の豊かな財政力を大企業や公共工事に費やすのでなく、住民の暮らしを守るように使っていきます」と力を込めた。

 二月の知事選で各党が大村秀章知事を支援した「オール与党」県政の中、「物を言う」野党として、十二年ぶりの議席獲得をうかがう。 (垣見洋樹)

 ◇緑区 (三…4)

満仲美由紀49 党職員   共新

渡辺  昇46 会社社長  自現<2>

中村 友美55 党県役員  民現<7>

岡  明彦52 (元)高校教諭 公新