愛知

減税日本、旋風のち逆風名古屋市議選は擁立18人だけ

2015年3月26日

統一地方選で減税候補への支持を訴える河村たかし名古屋市長=同市で(一部画像処理)

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 四月の統一地方選で実施される名古屋市議選(定数七五)は、河村たかし市長率いる地域政党「減税日本」が前回選で巻き起こした旋風が、ぱたりとやんだ。「議員の家業化」に異を唱え、既存政党と対峙(たいじ)した四年前。二十八人が当選し、市議会の最大勢力に躍り出た。だが、相次ぐ不祥事や離反で半数以下の十一人に。「市長与党」として有利に迎えるはずが、土俵際の戦いを強いられている。

 「いろいろありましたが、十一人ですか。まあ、よう残りましたわ」。三月七日、買い物客でにぎわう名古屋市中区の大須商店街。統一地方選の出発式で、マイクを握った河村市長はしみじみ振り返った。

 「庶民革命」を掲げて就任以来、市議会と対立を繰り返していた市長は、市議会解散請求(リコール)を主導。ようやくこぎつけた二〇一一年三月の出直し市議選で、前年に結党したばかりの与党「減税日本」が二十八議席を獲得し、最大会派となった。

 だが、所属議員による政務調査費(現政務活動費)の不正使用や当て逃げ事件などが発覚。考え方の違いから離党者も相次いだ。

 「期待が大きかった分、裏切られたという思いが市民に広がっていった。取りまとめ役がいなかったのが響いた」。元愛知県議で党幹事長の広沢一郎さん(51)は、新人議員ばかりの「素人集団」に統率者が欠けていたと指摘する。唯一、議員経験があった市議団長も公約違反の不祥事で議員辞職。重しを失い、他会派からの揺さぶりにも遭った。

 「減税日本は市長の個人商店。私たちは市長の三大公約実現のための(議決時の)起立要員にすぎなかった」と打ち明けるのは、会派の初代幹事長だったが、新会派をつくって党から除名された舟橋猛さん(56)。

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 四年の間に議員報酬を半減して八百万円とし、5%の市民税減税を実現。選挙で選ばれた公募委員らによる「地域委員会」もモデル実施し、市長の三大公約はほぼ実現したが「ほかに議員を結び付ける理念や志がなかった」と語る。役割は終わった、と一期で引退する。

 離党者の中には、批判していた既存政党にくら替えし、二期目を目指す人も。減税日本は今回、十八人の擁立にとどまる。

 減税に残った山田真奈さん(29)は「報酬半減で議員が市民の側に近づいたが、庶民革命は道半ば」と悔やむ。四年前、大学院在学中に議員を志し、選挙区でトップ当選。今回は「名古屋を離れて家族と暮らすため」と不出馬を決めたが、庶民革命の夢は諦めていない。「市民の心が離れたのは事実。でも、政治を変えてほしいとの思いは変わっていないはずです」