福井

「若者に働く場を」渕上さんが雪辱果たす敦賀市長選

2015年4月27日

支持者たちと万歳三唱する渕上隆信さん(右)=敦賀市の事務所前で

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 当選が決まった午後十時半ごろ、渕上さんは歓喜の渦に包まれた敦賀市野神の事務所でバンザイ三唱。落選してから四年、苦楽を共にしてきた支援者らに向かって「お一人お一人の力で勝つことができた」と頭を下げた。

 選挙戦では、市内百三十一人の区長を通じ、市民の声を市政に反映させると訴え、「市民が主役のまちづくり」を一大公約に掲げた。告示前の有権者と語る会では、地域の課題に応じ丁寧に議論。住民の声に真摯に向き合う姿勢が共感を広げた。市長になった後も、市職員とともに年一回は市民の元に出向くと約束した。

 原発については「共存共栄」を図るとし、「再稼働や新増設を求めていきたい」と主張。1号機の廃炉で税収減が叫ばれる市財政については、新産業団地への企業誘致で財源確保に努めると提言した。

 インタビューでは「昨日より今日、今日より明日が住みやすい街にしたい」と抱負。地元経済は疲弊が目立つが、「原発再稼働や地場産業の活性化を通じて、若者が働く場を確保したい」と語り、選挙戦を通じて掲げたキャッチフレーズ「敦賀再生」への道筋を示した。

◆市民の声くみ政策を

<解説>

 敦賀市を二分した市長選では、市政刷新を訴えた渕上さんが、日本原子力発電敦賀原発1号機の廃炉決定や原発の長期停止で疲弊が目立つ地元経済の閉塞(へいそく)感を批判票として取り込み、組織力で追い上げる中村さんを振り切った。

 前回市長選では、現職に約二千五百票差まで迫った。落選後の四年間、一から見直した公約を引っ提げ、市民のもとに出向いた。告示前の有権者と語る会は五十八回を数え、総計で千四百人が参加。住民の声に寄り添う姿勢が共感を集め、市内約九十地区からも推薦状を取り付けた。

 ただ、自らが地場産業と位置付ける原発は再稼働が見通せない。主張した「再稼働や敦賀原発3、4号機の新増設」も国や電力事業者の方針待ち。国や県などに防災や地域振興の観点から何を求めていくのかが公約からは見えてこない。

 地方創生では、自治体も「陳情型」から「政策提案型」に変わらなければいけないと分析した渕上さん。市民の声に寄り添った経験を政策に落とし込み、原発立地の市の顔として、敦賀への共感を呼ぶ「発信力」が問われている。

 (角野峻也)