福井

<議員の非常識>(下)「原案通り」99.9%

2015年4月24日

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 いつもにはない雰囲気が漂った。昨年十二月の福井市議会予算特別委員会。市庁舎別館の改修問題で、委員が建築士による試算を示し、改修ではなく建て替えを提案したのに対し、東村新一市長がこう言った。

 「反問権の行使を許可願います」。反問権とは市側が逆質問できる権利。福井市では二〇一三年十二月に制定した議会基本条例で認められたが、行使したのは初めて。立場を変えての論戦に緊張感が生まれた。

 全国の地方議会が取り組む議会改革。県内でも十市町が議会基本条例を制定した。ネット中継の開始や議会報告会の開催など具体的な動きもある。福井市議会事務局の担当者は「昔よりも議員の自覚や責任は出てきている」と話す。

 本当に改革は進んでいるのか。それを探る一つの数字がある。99・9%。統一地方選で改選される福井、敦賀、小浜、おおい、高浜、池田の三市三町(無投票含む)で、この四年間に市長が提案した議案が原案通りに可決、承認、同意された割合だ。

 一方、三市三町で議員による政策的な条例提案は、この四年間でゼロ。福井市の議会基本条例は市政の重要課題に対し、提言や立案を目的とした政策検討会の開催を規定するが、これまでに開かれたことはない。

 地方議会が行政の追認機関となっているのは全国共通。全国市議会議長会の調査では一三年、全国で市長提出議案の99・1%がそのまま通過した。ただ、中には先進的な例もある。

 早稲田大マニフェスト研究所による一三年の議会改革度調査で、市町村議会トップの三重県四日市市議会。この四年間で四条例を制定、改正した。議会事務局の担当者は「観光大使設置条例など市側にはない発想もあった」と明かす。

 大分市議会の政策研究会は現在、九月定例会での自殺対策条例制定を目指し、調査研究を続ける。各会派から出した十人でつくる推進チームの会合は一三年八月以降で三十一回。当然、休会中にも開催する。

 座長の野尻哲雄市議は「メンバーは通常の倍のエネルギーが必要で大変」と言いつつも、こう強調する。「行政が出した議案を追認するだけではダメ。自分たちで考えることが議員の能力を高めるのにつながるし、市民への責任を果たすことになる」

 (統一地方選取材班)