福井

<議員の非常識>(中)質問考えぬ八百長議会

2015年4月23日

福井市議会での一般質問風景。県内のある市では、質問も回答も市側が作成するケースもあった

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 議会の定例会開会を二週間後に控えた平日、県内のある市幹部の携帯電話が鳴った。「何か作ってくれないか」。かけてきたのはベテラン市議。慣れた口ぶりで幹部が聞き返す。「本会議ですか、予特ですか」

 市議が依頼したのは晩ご飯のおかずではない。本会議の一般質問や予算特別委員会の質問作成。控室を訪れた幹部に市議はこう言った。「テーマは何でもいいから」。丸投げだった。

 数日後、幹部が作成した質問を市議に示すと「このまま読むわ」。さらに幹部が「回答はどうしましょう」と聞くと「どうでもいい」。定例会では、ともに市側が作成した質問と答弁が読み上げられた。

 最も大切な職分とも言える議会での質問を回答する側に作らせる。複数の市幹部によると、そんな市議は一人ではない。名が挙がった中には保守系を中心に一期目からベテランまでズラリ。その数は議員全体の約半数に迫る。丸投げ型からテーマを指定するタイプまでさまざまだった。

 「議員の仕事を何で職員がやらないといけないのか」。ある幹部はそう不満を漏らす。ただ、市側もしたたかだ。冒頭の幹部はこう明かす。

 「当然、答えやすい質問を作りますよ。答えも作らないといけないので。大変だけど、こちらも利用させてもらっています」。本会議や予算特別委員会はインターネットで中継される。市が力を入れている事業を質問させれば市のPRになる。

 この市議会の最高規範とされる議会基本条例は前文で「市長らとの緊張関係を保ちつつ(中略)市政運営の監視機能および政策立案機能をより高めます」とうたう。理念とは懸け離れた実態。全国市民オンブズマン連絡会議事務局長の新海聡弁護士は「八百長議会」と指摘。こう続ける。

 「昔は自治体幹部が想定問答集を作って議員に示すこともあったが、同様のことが今も続いているのは驚き。議会の形骸化で、そういう人は議員になる資格がないし、政務活動費を返還すべきだ」。統一地方選後半戦の投開票は二十六日。有権者の目が試される。

 (統一地方選取材班)