福井

<幸福度を問う>(6)農業改革待ったなし

2015年4月19日

新鮮な野菜が並ぶ農産物直売所。しかし、その作り手は高齢化の一途だ=福井市のアグリらんど喜ね舎で

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 二〇一〇年の世界農林業センサスによると、県内の農業就業者の平均年齢は六九・四歳と全国で五番目に高い。福井の農業を支えるのは高齢者だ。「2014年度版 全47都道府県幸福度ランキング」でみる福井の「食料自給率(カロリーベース)」は十四位。基礎としている一〇年度の都道府県別食料自給率で福井は67%と、全国平均の39%を大きく上回った。しかし、十年後、二十年後は−。

 午前八時半の開店から、新鮮な旬の野菜を求める客でにぎわう、福井市河増(こうます)町の「アグリらんど喜(き)ね舎(や)」。アスパラガスやマイタケ、小カブなど豊富な品ぞろえを支える七百人の登録農家のほとんどが「定年後の年配者」という。「私の生きがいやで、できる限り続けるつもり。八十歳でもやってる人がいるざ」。夫の岩夫さん(73)と農業を営む小林栄子さん(68)=福井市大瀬町=は朝一番で収穫したつまみ菜を手際良く店頭に並べ、日に焼けた顔をほころばせた。

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 一方、二〇〇〇年に八百四十六ヘクタールだった耕作放棄地は一〇年には千七百三十八ヘクタールと二倍以上に拡大した。県内各地で田植えの準備が始まっているが、坂井市坂井町蔵垣内であぜに除草剤を散布していた伊藤敏行さん(77)は思わずため息。集落内で農機具を共同利用して何とかやってきたが、今年は赤字かもしれない。「減反(生産調整)の補助金は減るし、コメの値段は下がる。環太平洋連携協定(TPP)とかも…。子どもらに農業をやれとはとても言えんわな」

 高齢化対策もあって国の主導で一四年度に始まった地域農業の担い手となる農家や農業法人などに農地を集積する事業は県内でも順調。米価急落を受け、県JAグループや県は野菜生産などへの転換を促す園芸振興に大きくかじを切った。農業を変えようとの取り組みは動きだしつつあるが「(改革は)遅すぎるくらい、もう待ったなしだ」(JA県中央会幹部)と将来を危ぶむ声は根強い。

 (北原愛)