福井

<あわらの進路>(下)人口減少募る危機感

2015年4月17日

伸び伸びと遊ぶ5歳児たち。子育て環境の整備は市の重要施策の一つだ=あわら市で

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 市の人口は三月一日現在で二万九千三百二十六人。この十年間で千三百人余り減少し、三万人を割り込んだ。二〇〇八年から一二年にかけての合計特殊出生率は一・四二。県内市町で下から二番目だ。有識者らでつくる「日本創成会議」が昨年五月に発表した「消滅可能性都市」(全国八百九十六市町村)のリストにも挙げられており、人口減少対策は待ったなしの状況だ。

 市は五歳児の子ども園の利用料を一五年度から無料にするなど、安心して子育てできる環境づくりに取り組んでいるが、企業誘致をはじめとして若い世代がU・Iターンしやすくするための施策がさらに求められる。

 こうした危機感は市民の間にも広がっており、「増え続ける空き家を無料か格安で貸すなど、思い切った施策が必要なのでは。とにかく人口が増えないことには、何もかもが衰退する一方だ」との声が上がっている。

 人口の減少は特に子どもで顕著。小学校の児童数の減少は深刻で市内十校の一五年度の新一年生は計二百人。一番多い金津は百人いたが、吉崎はゼロだった。市は六校を対象に再編する計画を打ち出し、一六年四月をめどに波松を北潟に、吉崎を細呂木に、新郷を本荘に、それぞれ統合することを目指して調整を続けている。

 波松では統合に向けて準備委員会が発足した一方で、吉崎と新郷では検討委での話し合いにとどまっている。市は「小学校は地域の核であり、住民の理解を得た上で進めたい」としているが、秋ごろまでに地元での話し合いがまとまらなければ、来春の統合は極めて厳しくなる。「年代による意見の相違が進行しない理由の一つとなっていると聞く」と明かす関係者もおり、議論が長引けば地域でいたずらに溝を深める事態になりかねない、と懸念されている。

 市の高齢化率は一五年三月現在29・8%で増加の一途をたどる。「元気なお年寄り」でいてもらうため、生きがいづくりとともに、まだまだ現役として社会参加する足掛かりとなる仕組みづくりが急がれる。

 六十五歳以上の元気な高齢者による創業には、資金面で支援する用意もしている。経営指導員らのアドバイスを得て経営計画を策定し、それが認められれば一年目に百五十万円、二年目は五十万円、三年目は三十万円の助成を受けることができる仕組みだ。市では「飲食業や旅館の清掃など、観光関連の事業に進出してもらえば、市の活性化にもつながる」と期待し「お年寄りに制度を知ってもらい、関心と意欲を持ってもらうことが当面の課題」と話している。

 (この企画は本田優子が担当しました)