福井

<岐路に立つ敦賀>(下)誘致企業の波及が鍵

2015年4月17日

新産業団地の建設予定地。すぐそばには国道8号が走り、交通の便もよい=敦賀市で

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 敦賀の地域経済は原発の長期停止で、疲弊が目立つ。敦賀商工会議所が昨年八月にまとめたアンケートでは、原発関連と取引のある百九十三社のうち、40・4%が前年度と比べ売り上げ実績が減少した。同商議所は「原発停止の影響は下げ止まっているが、低迷は続いている」と分析している。

 「原発だけに頼らない」地域経済、財政の担い手として、市が傾注してきたのが産業団地造成だ。二〇〇六年度に造成が完了した同市莇生野(あぞの)の産業団地(十三・八ヘクタール)は十・七ヘクタールが売れ、残りは四区画。さらに、県による無利子貸付基金を利用して同市田結(たい)に新産業団地(七・一ヘクタール)も計画、一七年度の整備完了を目指している。

 新産業団地は敦賀新港から東に一キロ、北陸自動車道敦賀インターチェンジから北に五キロに位置。市も立地を生かし、「物流、製造業の拠点に」と期待を寄せる。昨年七月に舞鶴若狭自動車道が全線開通し、二〇二二年度には北陸新幹線金沢−敦賀間が開業することも追い風だ。

 原発立地地域への恩恵として、八年間電気料金の半額相当が助成される優遇策も、進出企業には魅力に映る。市は近隣都市圏を対象に意向調査を実施。興味を持った企業には、聞き取り調査などを実施してアプローチをかける。

 ただ、隣接する美浜町も舞鶴若狭自動車道の美浜インターチェンジそばに、県の基金を利用した産業団地を建設している。狙いは物流や製造業で敦賀と同じ。価格競争になったら土地代が安い美浜に負けるおそれもあり、「苦しい嶺南地域でパイの奪い合いになりかねない」(現職市議)との懸念の声も上がる。市は手厚い福祉策や独自の優遇策を打ち出して「労働者に住みやすい敦賀を売り込みたい」とアピールする。

 だが、最終的に市税を投じて建設される産業団地の成否は、土地が売れたかどうか、ではないはずだ。

 固定資産税などでの財政面での貢献はもちろんのこと、雇用機会の創出や地元企業にも製品納入や敦賀の人材を生かせるチャンスが生み出せるかどうか。「原発だけに依存しない町づくり」の第一歩は、市民そして地域への波及効果が大きい企業を誘致できるかどうかにかかっている。

 (角野峻也)