福井

<岐路に立つ敦賀>(上)原発頼み脱却が急務

2015年4月16日

河瀬一治市長(右)に敦賀原発1号機の廃炉決定を報告する原電の増田博副社長(中)。当面は1号機に取って代わる歳入源を見つけることが鍵だ=敦賀市役所で

写真

 敦賀市長、市議選が十九日に告示される。五期二十年にわたり市をけん引してきた河瀬一治市長が勇退、同じく地域経済を引っ張ってきた日本原子力発電(原電)敦賀原発1号機の廃炉も決まった。立地する他の原発再稼働は見通せず、難局に立たされる敦賀市。そのかじ取りの担い手を決める選挙を前に、市の課題を検証した。

 「四十五年と長きにわたり、地元のご支援とご理解を頂きながら、運転させていただいたことに感謝申し上げたい」。三月十七日夕、原電の増田博副社長が敦賀市役所を訪れ、河瀬市長に廃炉決定を報告した。

 二〇一五年度一般会計当初予算約二百四十四億円のうち、歳入の二割を占めるのが原発関連。市は、敦賀1号機の廃炉で一六年度から毎年約五億円の減収を見込む。当面の三年間は、基金から年に三億円を取り崩すが、二十七億円ある基金は九年で尽きる計算だ。市は「歳出をもっと削るか、企業誘致や交流人口の拡大で税収アップを目指すしかない」と顔を曇らせる。

 事業の見直しは一三年度に着手済み。県内の他市町と規模を比較し、予算を圧縮している。敦賀1号機の廃炉が既定路線だったためで、約二億円の削減効果をもたらした。一四年度には生まれた子ども一人につき一律一万円の子ども用品を贈っていた「子育て応援育児用品支給事業費」も廃止した。市財政課は、削減額が増えるかどうかは「新市長の手腕次第」と言う。

 残る敦賀2号機、高速増殖原型炉「もんじゅ」の再稼働も見通せない状況が続く。市財政を長年潤してきた原発マネーに代わる新たな財源をすぐには見つけられないのが今の敦賀市の現状だ。ある幹部は「一番手っ取り早い地方創生は、再稼働と新増設」と本音を打ち明ける。だが、そのいずれも電力事業者が主体で市は受け身の立場にすぎない。

 原発との共存共栄を市の方針とし、それによるメリットも享受してきた敦賀だが、原発の長期停止が常態化する中で、財政も地域経済も困難な状況に追い込まれている。順調に増加していた人口も十年ほど前に六万九千人を超えたところで頭打ちになり、減少に向かい始めた。四半世紀後には五万五千人にまで落ち込むという推計もある。人口も財政も峠の下り坂にさしかかったのが今の敦賀と言える。

 市は国策としての原発へ貢献してきた経緯を強調し、繰り返し国に財政、経済支援を求めている。だが、まずは身を切る歳出削減、市民サービスの低下にも正面から向き合えるかが問われるだろう。自助努力がなければ、国費を投じる国民全体の理解は得られない。

 (角野峻也)