福井

<幸福度を問う>(4)介護現場の悩み深く

2015年4月12日

食事の世話をするホームヘルパー(左)。仕事内容は多岐にわたる=福井市町屋2で

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 住み慣れた地域でずっと暮らせるように、政府は介護の軸足を「施設から在宅へ」と移そうとしている。その一翼を担うのが、訪問介護員(ホームヘルパー)だ。しかし介護の現場では、事業の採算性や担い手不足など課題が山積し、県内からも「正直、事業の今後に不安がある」との声が上がる。今後も高齢化は進む見込みで、環境整備が急務になっている。

 「2014年版 全47都道府県幸福度ランキング」で、福井のホームヘルパー数(一一年の常勤換算従事者、六十五歳以上人口千人当たり)は三・五人と四十四位。また、厚生労働省の調査(一三年)によると、県内のホームヘルパーは常勤と非常勤含め約千八百人。百五十五事業所が訪問介護サービスを提供し、利用者は四千二百人余りだった。事業所数は全国四十六位、利用者数は同四十五位だった。

 訪問介護の普及が進まない背景について、県長寿福祉課の担当者は「入所施設と通所施設が充実しているため」と分析する。その言葉を裏付けるように要介護認定者に対する施設整備率は全国二位、通所の利用は全国平均を上回る。他人を自宅に入れたくない県民性が影響している、との見方もある。県は介護保険事業支援計画(一五〜一七年度)で、二五年度にホームヘルパーら介護職員が一四年度比三割増の一万三千人余り必要と見込む。

 一方、現場の悩みは深い。花園在宅介護センター(福井市松本一)の増田真則所長は訪問介護について「需要はあるが、介護報酬が低く簡単には職員を増やせない。担い手もいない」と説明する。求人を出し、年単位で反応がないこともあった。

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 就業希望者が少ない理由は、仕事の厳しさと待遇の悪さ。介護福祉士の平鍋昭子さん(38)は「料理、掃除、身体介護と仕事内容が幅広い。一対一なので他人に頼れない怖さもある」と明かす。賃金は改善傾向にあるが、他業種に比べ低く、責任感が仕事を続ける原動力という。

 たとえ人材を確保できても、利用者の入院などで仕事がなくなる不安定要素も残る。増田所長は「二人体制にできればいいが難しい」と吐露。特定の事業所に所属しない登録制のホームヘルパーを派遣する組織があれば、もっと需要に対応できると提案する。

 福井市が昨年実施したアンケートでは、市内に住む六十五歳以上の五千人のうち、65%が介護が必要になった場合に自宅など在宅で生活したいと答えた。

 訪問介護は介護保険サービスの中核ともいわれる。市の担当者は「学校教育の中で訪問介護の仕事に魅力を感じ、目を向けてもらえるような取り組みが必要」と、環境整備の重要性を指摘している。(山本洋児)