福井

連日街頭演説、声からし 知事選ルポ、金元幸枝さん

2015年4月5日

 十二日投開票の知事選は共産新人の金元幸枝さん(57)と、四選を目指す現職で無所属の西川一誠さん(70)の一騎打ち。県内を遊説する候補者に記者が同行し、その活動ぶりを届け出順に紹介する。

 三日の朝一番、福井市内で街頭演説を終えて乗り込んだ選挙カーの中。「自転車のおじいちゃん 原発の再稼働をやめさせて」「中学生の男の子 戦争には行きたくない」。取り出した手のひらサイズのノートには、街頭で出会った市民の声がびっしり。「年金が下がって不安。新幹線より先に何とかして」と、慌ただしく書き加えた。場所や時間と出会った人の印象も。「汚い字でしょ。でも、せっかくの話をちゃんと覚えておきたいからさ」

県議選立候補者の応援に駆け付け、支援者らと握手を交わす金元幸枝さん=福井市で

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 この日は県議選告示日。午前九時、福井市内で立候補者の一人の出発式に足を運び「福井のひどい政治を変えるため、一緒に頑張ります」とマイクを握った。街頭宣伝中も各候補者の選挙カーと次々とすれ違った。知事選も折り返しだ。「金元、頑張れー」。高校のグラウンド横を通過中、部活動中の生徒から突然の声援。車窓からのぞく顔が思わずほころんだ。

 午後からは激しい雨だったが、一日を通して住宅地など計十五カ所で街頭演説に立ち「県民の命と暮らしを守る県政への転換」を訴えた。「原発ゼロの政治決断」と並び、国保税の値下げや子どもの医療費の窓口無料化、義務教育中の学校給食無料も重点事項だ。「県予算を1%やりくりすれば可能。主婦なら何とかなる水準だと思いませんか」と声を張り上げた。

 連日の演説で声はかすれ気味だが、勢いは増す一方。人影を見つけると握手を求めて猛ダッシュ。「原動力? 県民置き去りの政治への怒りかな。現職は『福井の幸福度は日本一』と自慢するけど、県民の景気や暮らしへの危機感は相当ですよ」。もどかしさが膨らむ。「街頭に立つと、そんな思いは私だけじゃないって分かる。それで、頑張ろうかって」

 午後七時すぎ、この日最後の演説会場となる福井市久喜津町の社西公民館へ到着。「靴は良いのを買ったのよ」。告示日に下ろしたばかりと言うが、すでに履き込まれた感が漂う。「口紅だけね」と、シンボルカラーの赤で唇を彩ると、大きく息を吸い込んで会場の扉を開けた。

 (北原愛)