福井

<幸福度を問う>(2)主体性の育成も必要

2015年4月3日

福井の教育向上について意見を交換する委員ら=3月31日、福井市の県国際交流会館で

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 「小中は学力トップクラスだが、高校になって伸びしろがなさすぎる」「まじめで従順も大切だが、自分で成し遂げていく力をどう育むか」

 三月三十一日、福井市の県国際交流会館で開かれた今後の県の教育を考える会議。委員からは小中学生の学力・体力が全国的にも高い半面、「主体的、創造的に行動できる大人になるか未知数」といった趣旨の課題を指摘する声も相次いだ。

 日本総合研究所がまとめた「2014年版 全47都道府県幸福度ランキング」で、福井の「学力」は堂々の二位。大学進学率は十二位。福井の子どもたちは本当に幸せなのか。

 福井の教育力の強みを研究した大阪大大学院の志水宏吉教授(教育社会学)は昨秋、その成果をまとめた著書を出版。県外から県内小中学校に派遣されている教員らも、なぜ福井の小中学生の学力・体力がトップクラスかを探り始めている。

 分析により、学校と地域、保護者の協力・信頼関係の強さや氷点下の教室でも私語を一切せずに床に雑巾がけする「無言清掃」など学習指導と生活指導の両面で、当たり前のことが当たり前に実践されていたことが明らかになった。都市部で格差が広がる中、志水教授は「福井はまっとうな群れる力(社会性)が発揮されている」と分析する。

 さらに、中学では一人の教員が複数の学年を担当する「タテ持ち」の教科担当制をとる。他県では一人の教員が一学年を担当する「ヨコ持ち」が一般的。福井では三年間を見通した指導ができ、定期的な教科研究を通じて複数教員のアイデアが反映されていることも要因という。

 一方、国の大学入試改革やグローバル人材の育成など、時代が求めるのは「自ら考え、行動し、表現する力」だ。県教委の三田村彰企画幹(三月三十一日当時)も「高校教育で生徒の多様なニーズをとらえ伸ばすための取り組みが課題」と認める。

 四日には県立初の併設型中高一貫校となる高志中学校が福井市に開校する。県内のある教育関係者は「保護者らが高志中・高に求めているのは、現時点では高校入試がないメリットと大学受験対策。自ら考え行動する教育に対する期待が高まるような実績を積み上げてほしい」と求める。

 (山内悠記子)