福井

<幸福度を問う>(1)誘致へ「営業力」不可欠

2015年4月2日

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 日本総合研究所編の「2014年版 全47都道府県幸福度ランキング」で、総合一位に選ばれた福井県。統一地方選の候補者や応援弁士の演説でも、しばしば「幸福度一位」が強調される。しかし、実態はどうなのか。聞き心地の良い言葉の陰に課題が埋もれてはいないか。ランキングを決める根拠となった個別の六十指標を入り口に検証した。

 「顧客の大半が首都圏。新規開拓のエリアも主に首都圏になり、東京で意思決定する方が効率がいい」。坂井市で創業し、二〇一一年に本社を東京に移したウェブサイト制作・システム開発会社の担当者は移転理由を話す。

 福井市の電気通信設備会社から一一年に独立した電子部品販売会社の本社は東京。東京に本社がある大手取引先と有利に交渉を進めるためだ。「支店レベルで進まない商談も本社同士ならまとまりやすい」と担当者。東京一極集中が、さらに東京集中を加速する構図だ。

 「全47都道府県幸福度ランキング」の指標「本社機能流出・流入数」で、福井県は三十九位。流入より流出が多いほど順位が下がる仕組みだ。データを提供した帝国データバンクによると、〇二年から十年間に、福井県から本社機能が流出した企業は六十七社。売上高の合計は四百五十七億円に上る。一一年の転出先は東京都が64%と最も多い。

 県も手をこまねいているわけではない。企業誘致課は福井の安い電気代やリスク分散などを売りに、年間千件ほど会社訪問を行っている。嶺南地方で産業団地の整備も進める。一定規模の工場の新増設数は徐々に増え、一四年は三十二件。だが本社機能の流入となると簡単ではない。

 政府は「地方創生」の一環で施策を打ち出す。東京二十三区から地方に本社機能を移した企業の法人税減税を行う関連法案を三月下旬、閣議決定した。ただ企業が適用申請を行えるのは一七年度まで三年間と短い。県企業誘致課は効果は限定的とみる。

 帝国データバンク福井支店の天野裕久支店長は「歴史的に福井と縁のある企業に働き掛けることが有効」と提案し、「知事ら政治家のトップセールスが欠かせない」と指摘する。地方に有利な施策を国に本気で実行してもらうためにも、選挙で選ばれる新しい知事の「政治力」と「営業力」が問われている。

 (西尾述志)

 =随時掲載

 <全47都道府県幸福度ランキング> シンクタンクの日本総合研究所(東京)が既存の統計データ60指標を用いて都道府県別の幸福度を分析した。地域に生きる人の幸福を客観的に考えるのが狙い。60指標の内訳は、基本5、健康10、文化10、仕事10、生活10、教育10、追加5。