福井

<激突 知事選>(上)高浜原発

2015年3月19日

 二十六日告示、四月十二日投開票の知事選は、四選を目指す無所属で現職の西川一誠氏(70)と、共産新人の金元幸枝氏(56)による一騎打ちとなる公算が大きい。原発、北陸新幹線、人口減少という県政の課題をどう捉え、取り組んでいくのか。両氏の主張をたどり、争点を追った。

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 「原子力の重要性に対する国民理解は十分とはいえず、政府がしっかり説明、説得する必要がある」

 二月中旬に新規制基準に適合した関西電力高浜原発3、4号機(高浜町)について、直後に始まった県議会定例会の提案理由説明で知事の西川一誠氏は従来の主張を繰り返した。

 再稼働に向けて新基準適合という大きなヤマ場を越え、焦点は「地元同意」に移った。だが西川氏は慎重な姿勢を崩さず、判断の前提となる五条件を政府に示している。

 十分な国民理解のほか、最適な電源構成の提示と実現、使用済み核燃料の中間貯蔵施設の県外立地へ向けた国の積極的な関与、東京電力福島第一原発事故を教訓にした事故制圧体制の強化、原発の長期停止で低迷する嶺南地方の経済対策という内容だ。

 さらに、原子力規制委員会による残りの審査状況も「確認する」としており、判断する時期はまだ先になりそうだ。

 一方、共産党県書記長の金元幸枝氏は出馬会見で、西川氏との対決姿勢を明確にした。「最適な電源構成を求める条件は再稼働が前提。原発をやめるわけじゃない。高浜原発が引き金になり、全国の原発が動くような状況は許せない」

関西電力高浜原発3号機、4号機=高浜町で2月、本社ヘリ「まなづる」から

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 福島の現場に足を運び、その思いを強くしている。「現場の光景は時間を経ても変わらず、いまだ十万超の人が避難し、毎日のように汚染水が漏れ続ける。事故は終わっていない」

 再稼働をめぐっては責任論も浮上している。規制委の田中俊一委員長は新基準に適合してもなお「リスクゼロではない」と発言し、政府は「規制委が安全と判断した原発は再稼働する」との姿勢。安全責任が宙に浮いた状況に対し、西川氏は二月の定例会見で「隙間がある」と政府や規制委に責任ある対応を求めた。

 金元氏も「判断することを逃げている」と政府や規制委に対する指摘は同じ。ただ、同じ矛先を西川氏にも向ける。理由は二つ。高浜再稼働に反対する県内外の二十万五千人分の署名を西川氏本人が受け取る機会を設けないこと。もう一つは原発の安全性や避難計画などの住民説明会を県主催で開かない点だ。

 西川氏は開催の必要性について「一義的に市町が判断する事柄」との見解を示すが、金元氏は「立地市町に(再稼働の)判断を押し付けているようだ」と疑問を投げ掛ける。