<県議選・記者が振り返る> (上)保守票分散で自民議席減
2019年4月10日
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七日に投開票された県議選では、候補者だけでなく、取材する記者たちも駆け回った。投票率は過去最低を更新し、目立った争点や対立軸がないとされたが、当落を分けた要因は何だったのか。今後の県議会はどうなるのか。各地の記者が取材ノートを読み返し、四十四議席を巡る各陣営の戦いぶりや裏話などを、二回に分けて語り合う。
A 選挙結果をどう見る?
B 自民は公認、推薦合わせた当選者数が改選前の二十二人を下回った。立憲民主、国民民主、地域政党「チームしが」は、非自民の無所属を含めると勢力が増したと言える。
A ただ、党派別の得票割合を見ると、自民が最多の50・9%を占め、前回からも4・6ポイント増えた。チームしが・立憲民主が26・8%、共産は10・5%、公明が4・3%だった。
C 今回、自民の公認、推薦候補は前回より一人多い二十九人で、当選者は十九人。落選した現職四人の中には、会派代表の家森茂樹さん(67)、県連会長代行の佐野高典さん(70)ら重鎮もいて驚いた。
A 自民の議席減の要因は?
C 選挙区別で見ると、積極的に公認、推薦候補を立てた長浜市と彦根市・犬上郡で、保守票が分散したようだ。この二つの選挙区では、推薦候補が二人ずつ落選している。
B ある自民関係者が「三つ取れるところで二つしかとれなかった。調整不足は否定できない」と嘆いていた。やはり、選挙戦略の失敗と言えるだろう。
A 佐野さんが落選した大津市選挙区はどう分析する?
C 自民は現職五人が立候補したが、このうち桑野仁さん(60)は昨夏の補選での当選組。四年前は、自民系の当選者は四人だった。
B 桑野さんは市北部の堅田学区が拠点で、佐野さんは隣の真野学区が拠点。地盤がかなり重なったことも、影響したのでは。
A 家森さんが落選した甲賀市選挙区は、当初は無投票の風が吹いていたが、村上元庸さん(64)が告示一カ月前に名乗りを挙げて選挙戦になった。
D 村上さんの地元の土山地域は投票率が高く、住民の「土山から県議を」という結束が、村上さんを勢いづかせたようだ。
B 現職陣営は村上さんに緩みを突かれた。「七選安泰」と言われた家森さんに、最も大きな影響があったのかもしれない。
A 今夏の参院選をにらんだ「与野党対決」と言われた米原市選挙区は、最も注目を集めた。
B チームしがの角田航也さん(46)が再選を果たし、参院選で野党統一候補の擁立を目指す「非自民」が弾みを付けた。自民関係者からは、参院選を心配する声も聞かれた。
C 角田さんの元には国民代表の玉木雄一郎さんが駆け付け、自民も石破茂さんや石原伸晃さんら大物弁士が来た。野党統一候補として有力視される嘉田由紀子さん(68)の姿も、たびたび見かけた。
E 塚田一郎元国土交通副大臣の「忖度(そんたく)」発言も追い風になったかもしれない。市民からは「自民はダメだ」という批判を多数聞いた。
A 近江八幡市選挙区で立候補した前衆院議員の武藤貴也さん(39)は伸び悩み、最下位だった。
F 武藤さんは演説で「政治生命を懸ける」と繰り返したが、敗戦の弁では「結果が全て」と言葉少な。もう少し、接戦の結果だったら、次に期待する声も出そうだが…。
(県議選取材班)