統一地方選2019

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<自治のあした> (6)外国人との共生

2019年3月23日

さくら教室のボランティアで、日本の歌を教える赤祖父さん(左から2人目)=湖南市で(赤祖父さん提供)

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 「ボランティアだけではもう限界。外国人への対応を、どのように考えておられるのか」。今月五日、湖南市議の赤祖父裕美(57)は市議会定例会の一般質問で、四月の改正入管難民法施行に伴う市の対応をただした。

 どの自治体も悩む、外国人との共生の問題。湖南市の場合は二月一日現在、人口五万五千八十一人に対し、外国人市民が三千三人と5・4%を占める。半数以上がブラジル人だが、国籍はどんどん多様化し、県内トップの外国人比率も年々増加。四月以降、さらに加速するのは必至だ。

 日本語を全く話せない小中学生を対象とした市教委の初期指導教室「さくら教室」の運営にも影響が大きい。昨年九月に十四人だった児童生徒は、今年二月には二十五人にまで増えた。市教委は指導員を二人から三人に増やしたが、ボランティアが提供してきた染め物や茶道などの体験は費用がかさみ、継続は難しい。

 “国策”によって、現場の市町間で指導員の待遇改善競争が起きるなど、市が苦悩しているのも赤祖父には分かる。「でも本当に人が足りなくて困っている。現場を目の当たりにしてきたからこそ、市に訴えなければ」と思いを強くする。

  ◇ 

 さくら教室が開設されたのは二〇〇七年。本来、議員に予算の提案権はないが、当時、市長の谷畑英吾(52)は市議一人一人に二十万円の予算枠を割り当て、提案を促していた。赤祖父はさくら教室の教材費に充てることを提案。以来、教室には一貫して関わる。

 市国際協会のボランティアとして、月一回ほど授業に顔を出す。ずっと学んできた音楽を生かし、「ジングルベル」「うれしいひなまつり」など、季節の歌を教える。「言葉が通じないのは厳しいが、ドレミは世界共通。子どもたちの目はキラキラしてる」

 外国籍の子どもたちは、日本の友達が食べている物が気になる。でも家で作ってもらえない。そんな問題を解決しようと開かれた日本の家庭料理教室にも参加し、肉じゃがや豚汁の作り方を手ほどきしながら母親たちとも親交を深めた。

  ◇ 

 議員を志したきっかけは〇二年、PTA副会長を務めていた小学校の女子児童が、下校中に大型トラックに巻き込まれて亡くなった事故。PTAは安全対策を再三要望してきたが、ガードレールが設置されたのは事故後だった。「なぜ大切な命が失われる前にできなかったのか」との思いが、行政に物を言う議員への道に駆り立て、翌年、旧石部町の町議になった。

 自分が講師として教えるピアノが救いになった不登校の子もいた。大人の目配りの大切さを感じ、議員になっても「困っている子どもたちをほっとけない」という。外国籍の子でも、その気持ちは変わらない。「日本に来て不安でいっぱいの子どもたちに『優しく見守ってくれる日本人もいるんだよ』って知らせたい」

  ◇ 

 最年少市議の菅沼利紀(41)は、部長を務める市商工会青年部の仲間と共に働き掛け、在名古屋ブラジル総領事を市に招いた。ブラジル人のパスポート申請や出生証明などの手続きができる「移動領事館」を、市に誘致したいという思いがあった。

 外国籍の住民に参政権はなく、市議選で自分への票が増える訳ではないが、「何が湖南市の特色か」と考えた結果だ。同じ旧甲賀郡でありながら、忍者のイメージは東の甲賀市に奪われている。「外国人の比率が高いことこそ、武器なんとちゃうか」

 今夏には、外国籍の子どもたちに江州音頭の指導を計画している。ブラジル人街のようなものができ、国際都市としてにぎわう市の将来も思い描く。

 「郷に入っては郷に従え、という風潮があるが、それは違う。恩恵を受ける僕らが、合わせていかなあかん」 (文中敬称略)

 =終わり

 (この連載は、成田嵩憲、小原健太、渡辺大地、作山哲平、稲垣遥謹、築山栄太郎が担当しました)

 

統一地方選の日程

前半戦
知事 告示3/21(木)
政令指定市 市長 告示3/24(日)
県議 告示3/29(金)
政令指定市 市議 告示
投開票4/7(日)
後半戦
一般市長、一般市議 告示4/14(日)
町村長、町村議 告示4/16(火)
投開票4/21(日)
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