統一地方選2019

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<自治のあした> (5)自治体で相次ぐ不祥事

2019年3月22日

不祥事の再発防止を願う元市長の泉さん=米原市で

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 元米原市長の泉峰一(69)は昨年四月十一日、朝からため息が止まらなかった。視線の先にあったのは「米原市元部長ら逮捕」の見出しが躍る新聞記事。容疑者は、二〇一三年まで一期務めた市長時代、職員として市政を支えてくれていた。

 逮捕容疑は入札情報を業者に漏らしたことだった。「まさか」。実直な性格で一目置かれていた、元市部長の人柄が浮かんだ。それと同時に、「またか」という思いが胸を覆った。

 米原市では、その五カ月前、市主査(当時)が入札情報を業者に漏らした疑いで逮捕されていたからだ。さらに前には、市職員による公文書偽造や傷害といった不祥事も発覚。事件が起きるたびに、泉は市長就任からわずか三カ月後に味わった、苦い記憶がよみがえった。

   ◇ 

 〇九年六月、市発注の水道施設工事を巡り、上下水道課の参事が業者に入札情報を漏らし、見返りに百万円を受け取ったとして逮捕された。「えらいこっちゃ」。就任早々の汚職事件発生に、泉は動揺した。

 農水畑の県職員だった泉は、不祥事対応の経験がなく、何から手を付ければ良いか分からなかった。「とにかく、何かしないとあかん」。副市長や総務部長らと話し合い、副市長をトップとする「再発防止対策委員会」を立ち上げた。

 再発防止委では、入札の透明性の確保を検討。その後、入札情報が外部に漏れないよう、事前に把握している人を、発注した担当者や市長ら数人に限定した。さらに、入札の当日になってから最低制限価格を設定する仕組みに改めた。

   ◇ 

 だが昨年四月の事件は、のちに現金や旅行券の授受が発覚し、〇九年と同じ贈収賄事件に発展した。再発防止に向け制度を改善しても、職員個人の意識を向上させない限り、事件が繰り返されることが浮き彫りになった。

 人口約三万九千人の米原は職員数が少ないため、担当者は同じ人になりがち。泉は「担当者と業者が顔を会わせるたびに関係が密になり、『この人に頼めば…』と思うようになる人もいるでしょう」と語る。

 泉は市長任期の折り返しを迎えた一二年、市職員に法令順守を求める「コンプライアンス行動指針」を策定していた。ただ、「指針があっても、職員に徹底させる教育が甘かったかもしれない」と反省する。

   ◇ 

 近年の一連の事件を受け、市は昨年二月、コンプライアンス行動指針を改定。市職員に順守を徹底させるため、指針に掲げた目標を達成するための「行動計画」も策定した。職員向けのコンプライアンス研修会も二カ月に一度開き、情報管理の徹底を促している。

 公務員による不祥事は全国で後を絶たない。こうした自治体では、選挙で首長や議員たちの指導力、チェック能力が問われることになる。

 不祥事をなくすにはどうすれば良いか。「コンプライアンス(の徹底)以外に道はないんじゃないか」。泉は静かにつぶやいた。

(文中敬称略)

 

統一地方選の日程

前半戦
知事 告示3/21(木)
政令指定市 市長 告示3/24(日)
県議 告示3/29(金)
政令指定市 市議 告示
投開票4/7(日)
後半戦
一般市長、一般市議 告示4/14(日)
町村長、町村議 告示4/16(火)
投開票4/21(日)
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