統一地方選2019

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<県都のゆくえ 津市長選を前に> (上)地域おこし

2019年4月10日

地元のわら細工職人、森谷正巳さん(左)から、わらの編み方を教わるドイツ人記者=津市美杉町八手俣で

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 津市長選の告示が十四日に迫った。立候補を表明しているのは現職の前葉泰幸さん(57)だけ。二回連続で無投票となる見通しだが、県都を取り巻く課題は多い。現状や今後を探った。

 町全体の九割が森林という豊かな自然を誇る津市美杉町に三月中旬、ドイツ人の男女の姿があった。森林セラピーや林業体験、宿場町の名残を残す伊勢本街道の散策を楽しみ、夜は農家やゲストハウスに宿泊して田舎暮らしを満喫した。訪日旅行客の誘致に向け、海外の記者らを招いた三泊のモニターツアーだ。

 企画したのは、ホテル「美杉リゾート」を経営する中川雄貴さん(35)。体験型ツーリズムで地域を活性化しようと、二〇一六年に地元の有志や市とともに「Inaka Tourism推進協議会」を立ち上げた。

 町全体を一つの宿として捉え、地域ぐるみで観光客をもてなす取り組みを進めている。点在する農家民泊や民宿を客室とし、農業や林業体験は地元の農家や林業就業者が担い、食事は地元の飲食店を利用してもらう。観光客がホテルの外へ出て町を巡ることで、地域の店や住民との交流を生む狙いもある。

 中川さんは「日本の自然や田舎暮らしに触れたいという外国人観光客のニーズは高い。観光を軸にさまざまな産業がつながることで、地域経済の活性化が期待される」と明るい展望を描く。

 協議会では、日本に長期滞在し、生活や歴史、文化を知りたい外国人観光客の呼び込みに力を入れる。海外メディアの招待ツアーもその一つ。限界集落の田舎ツーリズムとして、米国や欧州、タイのテレビや雑誌に取り上げられた。中でも森林セラピーへの関心は高く、イタリアの健康雑誌には「Shinrin−Yoku」として紹介された。

 美杉地域は厳しい現状に直面している。人口は一九八〇年代半ばの一万人から四千二百人まで激減し、高齢化率は59%と市全体の二倍に達する。中川さんも「美杉地域の活性化は、今が最後のチャンス」と危機感を抱く。

 市は一六年に作成した美杉地域の「過疎地域自立促進計画」に基づき、移住希望者向けに開設した「空き家情報バンク」を充実させ、改修費の一部を補助するなど、定住人口を増やそうと取り組んでいる。

 実際、協議会のメンバーや取り組みに賛同する人は、県外からの移住やUターンも多い。中川さんは「二十年後、地域が生き残っていくためには、若い世代や移住者の力が不可欠」と話す。

 地域にある資源を生かして訪日客をもっと呼び込めれば、産業が生まれて定住する人も増えるのではないか。「過疎地域の持続的な発展のため、行政も一体となって美杉の知名度を上げていくことが外から人が入るきっかけになる」

 津市なぎさまちの高速船ターミナルと美杉町を結ぶ二次交通の充実など、民間の力だけでは難しいこともある。新たな取り組みを模索する住民たちの活動をどう支え、人口減に向き合うのか。市の役割は間違いなく大きい。

(斉藤和音が担当します)

 

統一地方選の日程

前半戦
知事 告示3/21(木)
政令指定市 市長 告示3/24(日)
県議 告示3/29(金)
政令指定市 市議 告示
投開票4/7(日)
後半戦
一般市長、一般市議 告示4/14(日)
町村長、町村議 告示4/16(火)
投開票4/21(日)
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