統一地方選2019

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<ルポ激戦区> (6)尾鷲市・北牟婁郡区

2019年4月6日

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 「大変厳しい情勢に、いても立ってもいられなくなった。一人、五人、いや十人に支援の輪を広げてほしい」

 告示から二日後、尾鷲市内であった自民現職の東豊さんの街頭演説で、地元選出の三ツ矢憲生衆院議員が、支援者ら五十人に深々と頭を下げた。

 県内有数の過疎化と高齢化が進む尾鷲市・北牟婁郡選挙区は、四年前の無投票から一変した。選挙区初の女性候補で無所属新人の石川美紀さんが、現職二人を脅かす台風の目となり、もう一人の新人も切り崩しを狙う。

 石川さんは昨年、関西でのキャリアコンサルタント職を捨てUターンした。「私の住む紀北町引本浦は、尾鷲と紀北の真ん中。どこへでも飛んでいけます」。約二十五年ぶりに地元へ戻り、知名度は遠く及ばない。選挙チラシには「父は紀北、母は尾鷲のハーフ」と書き込んだ。

 旧紀伊長島町議だった父の後押しを受け、「子どもの声が響く未来」を掲げて女性の浮動票を狙う。「すべてが重点地域」と各集落をくまなく回り、「紀北で四千票、尾鷲で三千票を取り、トップ当選を目指す」と自信をのぞかせる。

 女性新人候補の出現に、同じ紀北町が地盤の東さんは「当落ギリギリ」とこぼす。陣営関係者も「女性というだけで女性票が集まる。危機感バンバンです」と不安を隠さない。

 東さんは「政権与党の議員として政策を実行できる」と自らの立ち位置をアピールしている。自民が推薦する知事選候補者の鈴木英敬さんが選挙区内を遊説した際は、行く先々に同行し「司会役」を称した。「鈴木英敬を先頭に頑張ります」と頭を下げる姿に、支持者からは「知事より必死やな」との声が漏れた。

 「都会から来た女性がどれだけ受け入れられるのか、読めない」。旧民進系地域政党の新政みえ公認で、尾鷲市にただ一人住む津村衛さんは、街頭で石川さんと鉢合わせすることが多い。「有権者の反応はいいが、手応えがあると思ってはいけない」と気を引き締める。市議時代から培った知名度を生かし、県議三期の実績と若さも訴えていく。

 それぞれ公約は異なる。過疎化を巡って石川さんは「子どもを増やすには若い人が働く場所が必要」と、漁業の活性化に向けた魅力発信や資源管理を力説する。一方、長年の人口減少に歯止めをかける難しさを知る津村さんは「県政課題は一つではない」と言い切り、東さんは子育て支援や空き家対策などを幅広く訴える戦略に出ている。

 「漁業問題しか訴えておらず、残土対策にも具体性がない」。元紀北町議で無所属新人の奥村武生さんも、石川さんを意識する。自らの街頭演説では、紀北町では首都圏からの建設残土問題、尾鷲市では津波対策や子育て支援と、時間を割く内容を使い分けている。

 新しい風は吹くのか、それとも経験が勝るのか。静かな漁村が答えを出す日は近い。

 (木村汐里、三沢聖太郎)

 =終わり

 

統一地方選の日程

前半戦
知事 告示3/21(木)
政令指定市 市長 告示3/24(日)
県議 告示3/29(金)
政令指定市 市議 告示
投開票4/7(日)
後半戦
一般市長、一般市議 告示4/14(日)
町村長、町村議 告示4/16(火)
投開票4/21(日)
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