統一地方選2019

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<ルポ激戦区> (5)鳥羽市区

2019年4月5日

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 県議会の議論で消滅しかけた一人区の鳥羽市選挙区は、定数削減に賛成、反対の立場で対立した二候補が、一騎打ちを繰り広げている。ただ、短時間の街頭演説では説明しきれないためか定数への言及は少ない。

 再選を目指す無所属現職の野村保夫さん=自民推薦=は告示日、本土での出陣式を終えるとチャーター船に乗り、四離島を駆け回った。最初の坂手島では定数問題を取り上げなかったが、夜に本土の堅神町で開いた演説会では「人口だけで定数を判断するのはおかしい。何とか鳥羽の一人を確保できるよう頑張りたい」と訴えた。

 二〇一一年以来、二度目の出馬となる元鳥羽市議の無所属新人、尾崎幹さんは出陣式で「一票の格差で定数を減らしたのに、元に戻したのはおかしい」と述べた。一日に安楽島町で開いた個人演説会では四十五分間、県と市の二重行政解消などを熱弁したが、定数問題には一言も触れなかった。記者には「忘れただけ」とけむに巻いた。

 県議会は一四年、定数を五一から四五に減らすと決めた。鳥羽市選挙区は志摩市選挙区との合区(定数二)となり、今回から適用予定だった。有権者数は鳥羽の一万六千人に対し、志摩が四万四千人と二・七倍。鳥羽の候補が当選する可能性は極めて低くなるが、一八年三月の見直しで定数が五一に戻り、鳥羽の一議席も復活した。

 野村さんは一七年の補選で初当選し、定数削減の撤回にも力を入れた。「鳥羽の議席は必要。歳費や政務活動費を削減し、四十五人分の金額で五十一人が活動できるようになった」と取材に胸を張った。

 一方の尾崎さんは一八年六月、四日市市議らと定数削減の再検討を求める意見書を県議会に提出した。「三重は違憲状態。四五と言わず、もっと少なくてもいい」。再び定数が削減されれば、選挙区は本当になくなる見通し。そのことは選挙戦では触れていないが、支持者の一人は「定数削減は争点のごく一部」と理解を求める。尾崎さんは市内各地に培った人脈を生かし、若い世代の支持も集めている。

 野村さんの陣営は「鳥羽の議席をなくすために動いた尾崎さんが、野村さんらが残した議席に座ろうとするのは道義的にもおかしい」と反発する。補選で無投票だった野村さんは市内全域での知名度が低く、中村欣一郎市長の支援を受けて支持拡大を進めている。

 野村さんが「北勢などの県議は漁業や離島に関心がない。代弁できるのは鳥羽の議員だけ」と言えば、尾崎さんは「鳥羽に関心を持ってくれる県議はいるし、合区になっても勝てばいい」。こう記者に主張し合う二人だが、最大の争点とみられた定数問題を有権者にどこまで訴えていくのか。

 鳥羽磯部漁協、市観光協会などの主要団体は、双方に推薦状を出して中立を保っている。混迷を深めながら選挙戦は終盤を迎えた。

 (西山和宏)

 

統一地方選の日程

前半戦
知事 告示3/21(木)
政令指定市 市長 告示3/24(日)
県議 告示3/29(金)
政令指定市 市議 告示
投開票4/7(日)
後半戦
一般市長、一般市議 告示4/14(日)
町村長、町村議 告示4/16(火)
投開票4/21(日)
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