<県議選激戦区を歩く> (3)瑞浪市
2019年4月3日
「絶対に負けられない」「県内で一、二を争う激戦区です」。新元号「令和」の発表から一夜明けた二日。かつて戦国武将が陣取り合戦を繰り広げた陶都に、マイクの声が響き合った。
一つの椅子を巡り、自民と保守系無所属の一騎打ちとなった瑞浪市選挙区。「厳しい」。どちらの陣営も同じ声が漏れる。両候補はのっけから全力疾走だ。
「四年前、本当に悔しい思いをした。涙はもう終わりに」。自民の擁立した新人、小川祐輝が事務所開きで声を張り上げたのは三月十六日のこと。壁には国会議員や市議、業界団体などが寄せた約四十枚の「ため書き」がびっしり。一期務めた市議時代に磨かれていた革靴は、あいさつ回りなどで擦り傷だらけだった。
傍らには元自民県議の渡辺真。マイクを握り、小川への支持を強く訴えた。
四年前−。党市支部長を務め、同選挙区で当選四回の現職として出馬したのが、その渡辺だ。当時七十三歳。「世代交代」を主張し離党した元同支部幹事長、山田実三の挑戦を受けた。
結果は、渡辺が七千八百三十九票、山田は八千七十六票。苦戦が予想された山田がわずか二百三十七票差で渡辺を破る波乱に。だが、渡辺は落選後も支部長職にとどまる。今回、後継として三十三歳の小川を、六十四歳で無所属のまま再選を目指す山田にぶつけた。
一方、受けて立つ側となった山田は小川と同じ日、事務所を開いた。壁に貼られたため書きは、「同志」と呼ぶ元市議からの二枚だけ。前回と同様、大きな組織に頼らない選挙戦術だ。
演説では、一部の相手陣営からの「県から地元への予算が減った」との主張に、データを挙げ反論。「みんなで納得して決めようという住民自治が、地方自治を身近にする」と約二十五分間、熱弁を振るった。
三月二十九日の告示後も両候補の動きは対照的だ。
小川は連日、各地で大小の集会を開く。三十一日の総決起大会では「皆さんの声を聴き、市が進めるべき事業を貫き通したい。県とのパイプを取り戻す」と強調。駆けつけた野田聖子衆院議員とがっちり握手した。県政与党のメンツが懸かる党県連は応援のため、他の選挙区で無投票当選した県議らを続々と投入する。
これに対し、山田は告示日の出陣式で「政治は皆さんのためにある。県政を身近にしたい」と声を振り絞った。選挙カーでの顔見せや街頭演説など、地道な活動を積み重ねる。事務所を訪れる支持者らで目立つのは、普段着姿の高齢者らだ。山田が演説で四年間の実績を訴えると、聴衆から「そうだ」の声が飛んだ。
四年越しの因縁が絡み合う両陣営の訴えは、どちらが多く有権者に届くか。
街頭演説で小川は「厳しい戦いだが、負けるわけにはいかない」。対する山田は「もう四年、働かせてください」と力を込める。
前回から攻守を変えた「無所属VS自民」陣営の選挙戦は、後半に入った。
=敬称略
(統一地方選取材班)