統一地方選2019

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<県議選激戦区を歩く> (2)関市・美濃市

2019年4月2日

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 「この地域を日本一素晴らしいまちにしたい。関の刃物を上手に美濃和紙にくるんで、一緒に頑張ろう」。告示翌日の三月三十日朝、関市中心部の長良川鉄道関駅前で、自民現職の佐藤武彦が声を張り上げた。

 美濃市は人口が減少したことにより法律上の基準を下回り、関市との「強制合区」となった。有権者は美濃市の約一万八千人に対し、関市は約七万三千人に上る。

 佐藤が旧美濃市選挙区で前回まで四回重ねた当選は、いずれも無投票。初の選挙戦となるが「美濃の票だけで当選は厳しい」と関市街に繰り出した。演説では関市民への訴えを意識。小雨がぱらつく中、数人が立ち止まって耳を傾けた。

 関市・美濃市選挙区では定数三に対して、佐藤を含む現職三人と元職一人の計四人が立候補した。合区の影響を受けるのは、前回は旧関市選挙区から出馬した他の三候補も同じだ。「票の流れが読めない。誰が落ちてもおかしくない」と、各陣営は口をそろえる。

 うち、元関市長で県議会議長を務め、知名度のある自民現職尾藤義昭も「美濃市の選挙は一からのスタート。今までの経験が通じない」と表情を引き締める。

 選挙戦では地盤とする関市の企業や団体、旧町村部を中心に駆け回るだけではない。美濃市でも「直接、住民に会って、美濃市の問題を受け止めていきたい」と取り込みを狙う。

 前回、尾藤と接戦を演じて二議席を分け合った自民現職の酒向薫は、告示後の第一声では「目標は関市、美濃市に人を増やすこと。若い世代が活躍できる場を増やす」と、両市を並べて口にした。

 関市内で演説会を重ねて地盤を固めつつ、両市を含む「中濃地区」の少子高齢化対策や観光振興などの訴えに、力を入れている。

 一方、前回は二人に惜敗した旧民主系元職で無所属の林幸広は、告示当日に美濃市入り。幹線道路沿いで選挙カーを止め「美濃市と関市の壁はもうない。自民の三議席独占をなくす」と呼び掛けた。関市だけでなく、補選を除いた県議選で過去七回、連続して無投票が続いた美濃市で「自民以外の選択肢をアピールする機会」と捉えている。

 職人のまち関市と、商人のまち美濃市。二〇〇五年に関市に周辺の五町村が合併した際、美濃市は加わらなかった。各陣営は地域の一体感を訴えるが、ある候補は「両市は歴史も気質も違い、心理的にも距離がある」と難しさを漏らす。

 合区の戸惑いは有権者の間にもある。これまで地元の代表を県議会に送り出してきた一方、長く投票の機会がなかった美濃市。六十代女性は「地元から代表を出したい思いはあるが、選択肢ができるのは良いこと」と複雑な胸の内を語る。

 合区では旧両選挙区分を合わせた「定数三」が、今回は維持された。だが、ある候補は四年後には定数が減る可能性を指摘し「今回、当選の枠から外れれば政治生命が終わるのではないか」と危機感を隠さない。

 広がった選挙区を駆け巡り、各候補の攻防は熱を帯びる。

 =敬称略

 (統一地方選取材班)

 

統一地方選の日程

前半戦
知事 告示3/21(木)
政令指定市 市長 告示3/24(日)
県議 告示3/29(金)
政令指定市 市議 告示
投開票4/7(日)
後半戦
一般市長、一般市議 告示4/14(日)
町村長、町村議 告示4/16(火)
投開票4/21(日)
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