<県議選激戦区を歩く> (1)岐阜市
2019年3月31日
「国政も県政も自民がやりたい放題。許してはいけない」。県議選が告示された二十九日、立憲民主の現職渡辺嘉山の出陣式。マイクを握った党県連代表、山下八洲夫は力を込めた。
立民が今回、全選挙区で擁立したのは渡辺だけ。ここで虎の子の一議席を失うようなことがあれば、夏の参院選はおぼつかない。渡辺は「頭を丸めるどころか、岐阜にいられなくなるくらいの責任感だ」と話す。
定数九に主要各党の現職九人と、無所属新人二人が立った岐阜市選挙区。有権者の審判で、二人がふるい落とされることになる。
前回は八位で当選圏に滑り込んだ渡辺同様、危機感が強いのが同九位だった国民民主の現職太田維久だ。両者が共に前回は看板を背負った「民主」は、「民進」を経て立民と国民に分裂。だが、自民一強を前にいずれも党勢は上向かない。
太田の選挙カーや、のぼり旗に「国民民主」の文字はない。武器は、告示前から主要駅前などで重ねてきた街頭演説。三期十二年の経験をアピールし「政党より政策で判断してほしい」。
政党色に加え、選挙戦の軸になりそうなのが、三人の女性候補の動向だ。
再選を目指す自民現職の若井敦子は、党県連では唯一の女性県議。「責任政党として女性の声を受け止める」と、街角の女性や子育て世代に対して、握手攻勢をかける。
これに対し、前回は新人ながらトップ当選を果たした共産現職の中川裕子は「唯一の県政野党」の立場を強調。街頭演説を重ね「知事に物を言う姿勢を貫く」と幅広い層に浸透を図る。
ここに今回加わったのが、各陣営が「台風の目」と警戒する無所属新人の平野恭子。自民、無所属で県議を七期務めた父の地盤を継ぐ。前回は後継を目指した兄が落選した。告示日から繁華街を練り歩き、顔と名前を売り込んだ。
こうした情勢の中、生き残りを懸けるのは、自民の他の現職三人も同じだ。
当選七回の玉田和浩は二日に事務所を構え「こんなに早く事務所開きをしたことはない。危機感を持っている」。平野の出馬に「『女性の戦い』に、埋没してはいけない」と気をもむ。
若さをアピールする長屋光征は「実績や活動を見て投票を」と告示日に訴えた。平野とは市北部の地盤が一部、重なる。「誰よりも地域の人と会ってきた自信がある」と地元を回る。
地元の流通団地の活性化などを訴える広瀬修は、市南部が票田。出陣式では「南部は広瀬一人だから大丈夫だろうという話があるが、そんなことはない」と陣営の引き締めを図った。
公明は、市内で長年維持してきた二議席の死守を目指す。現職二人は市域をおおまかに南北で分担し、党支持層などに訴えを広げる。党県本部代表で前回は三位で当選した水野吉近は「現場の声を聞く。選挙に勝って仕事をしたい」と意気込む。前回は七位だった澄川寿之は四年間の実績を強調し「党のネットワークで、県の課題を国につなげる」と話す。
告示を目前にして出馬を決めた無所属新人の土田正光は「投票に行かないのは政治を諦めること」と有権者に呼び掛け、選挙カーで市内を回る。
(敬称略)
◇
四月七日投開票の県議選は、無投票当選が決まった十六選挙区を除く十選挙区で、舌戦が本格化した。「岐阜のかたち」を巡って各候補は何を訴え、戦いの構図は−。担当記者たちが県内各地の激戦区を歩く。
(統一地方選取材班)