統一地方選2019

メニュー

<自治って何> (1)議員のなり手不足

2019年3月22日

任期最後の本会議に臨む坂祝町議。統一選では半数の議員が引退するため、一時は定数割れの危機がささやかれた=同町役場で

写真

 いい人がいる、と聞いたのは二月の初めだった。「応援するのでぜひ」「お願いします」。訪ねた家で、そんなやりとりをした坂祝町議の永松英三さん(72)はほっと息をついた。「これで心置きなくやめられる」

 木曽川の堤防沿い。役場や駅があり、人口八千二百人余りの町の中心部を抱える取組(とりくみ)地区の代表として、十二年前の統一選で初当選した。三期での引退を決め、昨夏から六十歳前後の人に目星をつけては「選挙に出ないか」と説得していた。

 「政治に興味はない」「家族が反対している」と断られた。自分も選挙に出るときは、長老に三日三晩、頭を下げられてやっと決断した。「地元の議員がいなくなるのは絶対にいかん」。あきらめるわけにはいかなかった。

 統一選では、十人の町議のうち半数が引退する。誰もが後継者探しには苦労した。一時、ささやかれた定数割れの危機は回避できそうになったが、今回も年配者の候補予定者が多い。

 「町議の給料だけじゃ、家族を養えんし。若い人の政治への関心は薄いし…」。坂祝町議会の議員報酬は月額十九万円。四年前、十七万五千円からアップしたとはいえ、これだけで生活するのは苦しい。「二足のわらじ」を強いられる。議員活動に魅力がなければ、負担感ばかりが増す。

 議会では、傍聴を呼び掛けるチラシを配ったり、議場で中学生の質問に答える議会体験会を開いたりと、超党派で議員活動の大切さをPRしてきた。「町をよくしたい思いはだれにだってある。議会のことが理解され、議員活動に専念できる環境さえ整えれば、手を挙げる人は必ず増える」。永松さんは力説した。

 議会を、もっと住民に身近なものにするためには。ほかの仕事との掛け持ちでも満足のいく議員活動ができるようにするには。手法の一つとして、しばしば「休日議会」のアイデアが議論される。

 神戸町議会で試されたことがある。二〇一二年、年四回の定例会の開会日を日曜にした。「初日なので、行政側から議案説明がある。休みの会社員らが傍聴に来てくれるだろうと考えた」。当時、議長だった中村正孝さん(80)が振り返る。

 だが、初回の三月議会こそ、物珍しさからか十九人が傍聴したが、六月は一人、九月はゼロとすぐに関心は薄れた。「職員が休日出勤してまでやる意味はないという声が議会から上がった」(議会事務局)ため、一六年十二月定例会を最後に中止された。制度を少しいじるくらいで、何とかなるものではないようだ。

 四年前、二十代で当選した多治見市議の佐藤信行さん(32)は「若者が持つ、議員のイメージを変えたい」と話す。式典に出て、壇上から背広姿であいさつする堅苦しい姿に若者の共感は集まらないと思っている。「気楽な服装でいい。市民に身近なところで汗をかいているところを見せる。そんな議員が増えるといい」

 東京都葛飾区出身。子どものころから政治家志望で、岐阜5区選出だった阿知波吉信元衆院議員の地元秘書を経て出馬した。見知らぬ土地だったが、たくさんの住民に顔を覚えてもらった。「親戚が増えていくみたいでうれしいし、感謝される。議員はやりがいある仕事のはずです」

 (平井一敏、西村理沙、野瀬井寛)

     ◇

 暮らしに密着した身近な課題を考える地方議会が、どこかよそよそしい存在になってはいないだろうか。時代の変化で多様化する住民の声はくみ上げられているのだろうか。自治の現場を歩きながら考えた。

 

統一地方選の日程

前半戦
知事 告示3/21(木)
政令指定市 市長 告示3/24(日)
県議 告示3/29(金)
政令指定市 市議 告示
投開票4/7(日)
後半戦
一般市長、一般市議 告示4/14(日)
町村長、町村議 告示4/16(火)
投開票4/21(日)
ページトップに戻る

Copyright © The Chunichi Shimbun, All Rights Reserved.