首長提案、素通り6割 県内43議会にアンケート
2019年3月19日
首長とは別の選挙で選ばれた議員が、行政を厳しく監視する二元代表制は機能しているか。中日新聞岐阜支社は、県と県内四十二市町村の計四十三議会にアンケートして実情を探った。
◆対立せず
二〇一五年一月からの四年間で、首長が提案した議案を修正、または否決した件数がゼロだった議会は二十六で、全体の六割を占めた。否決したことがあると答えた議会も、否決した議案は数百件のうち一〜五件にすぎない。
誰がどの議案に賛成したか分からない議会もある。議案採決時に議員ごとの賛否を記録し、公開している議会は二十五(58・1%)どまり。「記録しているが非公開」としたのは四。記録さえしていない議会は十二(27・9%)に上った。
元多治見市長の西寺雅也さん。「行政に抱き込まれている」と議会を見る目は手厳しい |
かつて多治見市で市長を三期、市議を五期務めた西寺雅也さん(75)は「県内では、首長と議会が対立する図式はほとんどない。首長の支持派でいたいという議員心理があり、行政に抱き込まれているとも言える」と指摘する。
◆公開せず
本会議をテレビやインターネットで生中継していないのは十議会(23・3%)、議事録をネット公開していないのは九議会(20・9%)がある。
本会議とは別に開かれ、行政や議会に関する重要事項が話し合われる全員協議会は二十三議会(53・5%)が非公開にしている。全員協議会の設置を会議規則で明文化しているのは三十二(74・4%)だった。
議員が公開の場で行政の姿勢をただす最大の機会が本会議の一般質問だが、この権利をまったく使わない議員もいる。一五年一月からの四年間で、一般質問を一度もしなかった議員がいた議会は十五(34・9%)に上った。
西寺さんは「市民から『こんな問題がある』と情報が寄せられれば、一般質問をしないわけにいかないが…」。
◆提案せず
議会は、自らも条例案を提出することができる。だが、二〇一五年一月からの四年間で、議員提案で制定された政策条例がゼロの自治体は三十一と七割以上を占めた。行政に対する監視機能や情報公開、議員間の討議などを促進するための議会基本条例を制定した自治体は半数に満たない。
西寺さんは「議会は、市民の側に立って行政と対峙(たいじ)することで機能が果たせる。もっと緊張感を持って活動するべきだ」と話す。