県議会の改革 評価、課題は 早大マニフェスト研・中村氏
2019年4月6日
「議会として県民の声を吸い上げる仕組みが必要」と話す中村健事務局長=東京都中央区で |
七日に投開票日を迎える富山県議選。二〇一六年に発覚した政務活動費問題を踏まえ、県議会は失った信頼の回復に向けて議会改革を進めている。全国の地方議会の「議会改革度」を調べている早稲田大マニフェスト研究所の中村健事務局長(47)に取り組みの評価や課題を聞いた。(聞き手・酒井翔平)
県民の声聞く仕組み必要
ICT化の遅れが目立つ
−政活費問題発覚以降、富山県議会は都道府県議会の改革度ランキングで毎回順位を上げている。
「何かしなきゃいけないという危機意識を持って取り組むのはとてもいいこと。さまざまな取り組みを始めたことは評価すべきだ」
「ただ、ランキングは、報告された結果に基づき評価する仕組み。やればやるほど順位は上がる。都道府県議会は市町村議会と比べると、全体の順位は高くはない」
−課題は。
「全国的に見ても、議会活動が活発になればなるほど、県民の議会への信頼が高まるというわけではない。議会改革の行動が県民と共有できていない、伝わっていないのが一つの課題だ」
「県議会は市町村議会や国会よりも一番県民に遠い存在で、関心も一番薄いといえる。市町村議会がやる議会報告会レベルのことでなく、それ以上の情報発信、課題共有をする工夫が必要だ。議員個人ではなく、議会という組織として県民の声を吸い上げる仕組みが必要ではないか」
「もちろん、何でもかんでもすればいいというわけではない。議会改革の取り組みが県民に納得されているか、共有されているか、県民益につながっているか。そういう視点で自分たちの活動を振り返ってほしい」
−今後、県議会に求められることは。
「調査結果を見ると、ICT(情報通信技術)化の遅れが目立つ。ペーパーレス化が主な効果として挙げられるが、それだけにとどまる話ではなく、仕事の効率化も図られる」
「百万人以上いる県民の声全てを直接聞くことは不可能であり、ウェブを使って声を吸い上げる仕組みも当然検討しなければならない。ICT化が遅れているのは、住民の意見を聞く姿勢が足りないといえる」
ランキング 9位←19位
二〇一六年の政務活動費不正問題を機に、富山県議会は議会改革に取り組んできた。この年に十九位だった都道府県議会の改革度ランキングは年々順位を上げ、一八年は九位となった。
一六年度分から政活費の領収書をインターネットで公開することを決定。一八年三月には、議会の基本理念や運営ルールを定めた「議会の憲法」と呼ばれる議会基本条例が成立した。各会派の代表者で構成する「議会改革推進会議」を設置し、行動計画を毎年度策定し、進捗(しんちょく)状況を示すことなどを明記した。
この会議は同年六月に初会合を開催。開かれた議会を目指し、定例会の内容を紹介する「議会だより」などの広報紙を本年度から試行的に発行することとした。また、パソコンでしか見られなかった本会議や予算特別委員会のインターネット中継を、スマートフォンやタブレット端末でも視聴できるシステムに変更することも決めた。