統一地方選2019

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富士宮市政の課題 市長選、14日告示

2019年4月12日

◆商店街 にぎわい遠く

 統一地方選後半戦で十四日、富士宮市長選が告示される。これまでのところ、現職の須藤秀忠さん(72)のみが出馬を表明している。富士山や山梨側との街道を結ぶ交通の要衝として栄えた同市は今、市街地の観光客が増えつつある。だが、商店街など中心部のにぎわいにはつながっていない。

観光客でにぎわう県富士山世界遺産センター。商店街など市内中心部の活性化につなげられるかが課題=富士宮市で

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 二〇一七年末に開館した県富士山世界遺産センター(同市宮町)。斬新なデザインや展示方法が人気で、市営の観光駐車場には他地区のナンバーをつけた大型の観光バスが並ぶ。建物の前で記念撮影をする人はセンター休館日でも多い。これまでに六十万人を超える人々が訪れた。

 センターに程近い世界遺産の構成資産の一つ・富士山本宮浅間大社も人気スポットだ。市がまとめた一七年度の統計では、浅間大社周辺の観光入り込み客数は百五十六万四千四百七十七人で、前年度比14・64%増だった。

 須藤市政は二カ所を結ぶ「縦軸」の整備に乗りだしている。一九年度予算では民地買収費用などとして一億三百四十八万円を計上、遊歩道などを整備する。今年三月、市有地を貸し出した地ビールレストラン「Mt.Fuji Brewing(マウントフジブリューイング)」が開店。サイクルステーションとしての活用も視野に入れる。

 現在は広場の市有地を民間に貸し出し、飲食・物販エリアとして活用する計画もある。この土地の取得には、一部市民や市議から「急ぎすぎではないか」「購入費が高い」などと疑問が呈されたこともある。

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 その一方、市街地の「横軸」となる商店街への誘客は進んでいない。富士宮市観光協会副会長で、旅館「小川荘」の若おかみ、小川登志子さん(56)は「売り上げが増えたなどの実感はない」と話す。

 商店街はかつて、富士・富士宮地区の製紙業従事者を支え、山梨県側からも買い物客が訪れにぎわった。飲食店も多く、花街が芸者三百人を擁したことも。しかし大型店進出やネット通販の普及で、現在は二百余りのうち四分の一が空き店舗だ。

 市などによると、市外からの業者も含め出店意欲は旺盛だが、旧店舗所有者が高齢化し、商店を閉じたままでも生活に困っていないなどの理由で、新たな賃貸契約や店舗改造を渋るケースが目立つという。

 ただこれでは衰退は免れない。観光協会は市や商店街の代表者らと協力し、一八年「回遊参道まち歩き連絡会」(会長・小川さん)を立ち上げた。手始めに、「まちなか回遊おやつ食べ歩きマップ」を発行。案内所などで配布したところ、瞬く間に品切れとなり、この三月に一万部を増刷した。観光客の「富士宮は和菓子やケーキを売る店が多い」との指摘が発端だった。第二弾としてお酒好きの人に向けた「昼飲みマップ」なども検討中だ。

 市民にも「街中は面白そうだ」と感じてもらうため、マップは本年度、市内全戸に配布する計画だ。市地域政策推進室は「人のいない商店街に、観光客だけ来てもらうのは無理。人だかりがあれば観光客も目を向けてくれる」と指摘し、市街地のにぎわいを他地域の観光につなげて回遊性を持たせたり、土産物や食材など関連地域産業の振興に結びつけ、市全体の活性化に広げることを目指す。

 地元客相手に日用品を売る商店からは、観光中心の活性化策に冷めた声もある。だが小川さんは「呉服店や陶器店、鍛冶店など本物の日本文化を提供できる店も多く、欧米からの観光客が立ち寄る姿もよく見る。富士山のもとで文化を発信できるチャンス」と、商店主らの意識改革を呼び掛ける。意欲的な市民の活動を行政がどう後押しするかが問われそうだ。

(前田朋子)

 

統一地方選の日程

前半戦
知事 告示3/21(木)
政令指定市 市長 告示3/24(日)
県議 告示3/29(金)
政令指定市 市議 告示
投開票4/7(日)
後半戦
一般市長、一般市議 告示4/14(日)
町村長、町村議 告示4/16(火)
投開票4/21(日)
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