湖西の未来(上) 市議選、14日告示
2019年4月11日
◆人口減少 遠い買い物、悩む県境
高齢女性宅に食材を届ける佐々木善之さん(左)=湖西市境宿で |
愛知県豊橋市との県境に近い湖西市南西部、白須賀地区で三月末、一人暮らしの女性(77)宅に食材を届ける声が響く。「いつもの買ってきたよ。菓子パンと、野菜と」。笑顔で迎えた女性は「助かっとるよ。本当は気軽に出かけて自分で買いたいけどね」。免許を持たない高齢者の買い物を有志の市民が支える。
地域活性化を目指す湖西市新居町のNPO法人「DIGtag」は二年前、地区で買い物支援を始めた。週一回注文を聞き、新居町のスーパーで買って届ける。利用は十二軒で一回、五百〜六百円を手数料で受け取る。代表の佐々木善之さん(39)は「ほぼガソリン代で消える。厳しいが、おしゃべりを楽しみにする人はいて安否確認にもなる。何とか続けたい」と話す。
遠州灘に面する地区はJR東海道線から離れ、市のコミュニティバスが日に四本のみの区域もある。豊橋市と隣接するが地区につながる公共交通がなく、県境ならではの悩みを抱える。工場が集まり社員寮も多い一方、住民の高齢化で空き家が目立つようになった。地区外の最寄りのスーパーまで車で十分かかる。
市は同地区で昨年三月から、予約に応じて運行するデマンド型乗合タクシーの実証実験を始めた。利用登録は三月末で三百五十四世帯七百三十四人と地区全体の24%だが、一台当たりの乗車は一・一六人と伸び悩む。一乗車七百円とバスに比べて割高なうえ利用の手間がネックで、二カ年の実験で利便性を高められるよう模索中だ。
自動車関連の製造業が多く、浜松、豊橋市からの通勤者で昼間人口が一万人増える。湖西市は通勤者に住んでもらおうと新婚世帯や住宅を購入する世帯に助成金を出すなど、若い世代への支援策をここ一年で次々打ち出した。市内に移住した新婚世帯への応援金制度は昨年十月の開始から三十一件の利用があり、効果が出始めている。
一方、地区人口はここ十年で約七百五十人減り、四千三百人。六十五歳以上は三割を占める。市にタクシー実験を要望した地区自治会長連合会前会長の池山幸三さん(70)は「若い人が増えたらうれしいが宅地が少なく不便。高齢化はこの先も進むだろう。元々長く住む市民にとっても暮らしやすい地域にしてほしい」と話す。
(片山さゆみ)
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統一地方選後半戦で県西部で唯一の湖西市議選が、十四日に告示される。市が抱える課題を上下二回で伝える。