統一地方選2019

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静岡市長選検証(上) 知事との溝、より深く

2019年4月10日

選挙戦最終日、天野進吾さん(右)の応援演説をする川勝平太知事=静岡市葵区で

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 「私心がない。うそを言わない。飾らない。市長には天野さんしかいない」

 静岡市長選の最終日、六日夜。駅前から延びる目抜き通り、葵区呉服町の交差点で、川勝平太知事は天野進吾さん(77)の応援に立った。

 マイクを握るのはこの選挙戦で初めて。知事の登場は陣営の予定になく、天野さん自身も「驚いた」ほどだった。

 傍らには知事の妻貴美さんの姿も。知事は、三期目の当選を果たすことになる田辺信宏さん(57)の政治手法を再三批判しながら、特定の候補は支援しないと明言した。しかし、この演説に先立つこと四日前、貴美さんは応援弁士として天野さんを持ち上げ、知事自身が出馬を促したことまで明かした。

 市長選はまさに知事と田辺さんの代理戦争だった。選挙中に天野さんは「県と市の不仲」を執拗(しつよう)に指摘し、「私なら関係は劇的に良くなる」と言い続け、知事との蜜月ぶりを強調した。

 知事との関係を問われても田辺さんは沈黙を貫いた。陣営幹部は「土俵に乗る必要はない。乗ったら泥仕合になる」と説明した。最終日に知事がマイクを握ったことにも「前言を翻さないといけない状況に追い込まれたのだろう」と冷静に分析した。

 知事の後押しも効いたのか、ふたを開けてみれば、天野さんはマスコミ各社の予想を超えて猛追した。なかでも現市政に対する不満が根強い清水区で、田辺さんとの差は3・2ポイントしかない。

 天野さんと林克さん(63)の合計票は田辺さんの得票を上回る。圧勝だった再選時と違い、田辺さんは「謙虚な市政運営をやる」と張り詰めた面持ちで語った。一夜明け、三年以上ぶりに自分から知事を訪ね、「ノーサイドにしたい」と不仲の解消を求めた。

 こども医療費の無料化や三保松原の保全、駿河湾フェリーの振興、東静岡駅周辺の土地活用、社会基盤の整備…。県と市の連携が必要な事業は少なくない。

 知事は「(不仲を)ちゃらにしたいなら、市民が突き付けた批判を謙虚に受け止め、政策面でちゃらにしないと。田辺君は政治的なボキャブラリーは豊富だが中身がない」と“口撃”を緩める気配はない。

 田辺さんも、知事が真っ先に見直しを求めた清水の庁舎・病院の移転で、譲る構えはない。知事との溝をさらに深め、田辺市政の三期目は船出した。

    □  □

 七日投開票された静岡市長選で、田辺信宏さんは辛勝で三選を果たした。なぜ天野さんに猛追を許したのか。検証する。

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統一地方選の日程

前半戦
知事 告示3/21(木)
政令指定市 市長 告示3/24(日)
県議 告示3/29(金)
政令指定市 市議 告示
投開票4/7(日)
後半戦
一般市長、一般市議 告示4/14(日)
町村長、町村議 告示4/16(火)
投開票4/21(日)
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