統一地方選2019

メニュー

静岡市長選 田辺さん、県と連携誓う

2019年4月8日

静岡市長選で当選が決まり、支持者とタッチしながら選挙事務所に入る田辺信宏さん=7日午後10時19分、静岡市葵区で

写真

 三つどもえとなった静岡市長選は、無所属現職の田辺信宏さん(57)=自民党推薦=が、圧倒的な組織力や現職の強みを生かして三選を果たした。葵区の事務所で、支援者に「公約を着々と果たしていくことが私の重い責任」と語った。

 午後八時の投票終了と同時に「当選確実」の報が届いた前回選とは一変。午後九時半時点でも「当確」は流れず、会場にはわずかに緊張感も漂った。

 午後十時十七分、事務所に置かれた大型テレビで当確の報が映ると、支援者や市議ら二百人がガッツポーズ。直後に登場した田辺さんを「タナベ」「タナベ」の合唱で出迎え、握手やハイタッチで祝った。

 現市政に批判的な有権者が多いとされる清水区には細心の注意を払った。選挙戦で日焼けした顔で、「清水での厳しい声は十分承知している。これまで以上に丁寧に、清水の都市ビジョンを了解してもらえるようにしていきたい」と田辺さん。二日に一度のペースで区内を遊説したほか、四月からの予算や人事で清水の農業振興を約束するなど、現職ならではの選挙戦で不満の払拭(ふっしょく)に心血を注いだ。

 川勝平太知事からの再三の「口撃」にも動じず、大人の対応に終始した。当選の弁では、選挙戦でほぼ触れることがなかった県市連携にも言及。「連携という言葉を市政運営では大事にしてきた。国のみならず、県との関係を構築しないといけない。緊張感を持って市政運営にあたりたい」と語った。

◆天野さん 政界引退の意向

支援者と握手を交わす天野進吾さん=7日午後10時34分、静岡市葵区で

写真

 無所属新人の前県議、天野進吾さん(77)は午後十時すぎ、妻日出子さん(76)とともに、支援者が集う葵区の事務所近くの幼稚園に現れた。「挑戦が使命と考えたが及ばなかった。力不足を申し訳なく思う」と敗戦の弁を述べた。「夢は心の中に収める。自分自身が(選挙に)手を挙げることはもうない」と政界を引退する意向を示した。

 昨年秋から擁立を目指した副知事の出馬断念を受け、告示の一カ月前に急きょ、責任を取る形で立候補を表明。長年属した自民からは除名され、企業や組織の支援も得られぬ中、半世紀を超す政治家歴で培った人脈を頼りに選挙戦を進めた。

 「県と市の連携」を最優先公約に掲げ、最終盤には川勝平太知事も応援演説に立った。「これまでと同じ徒手空拳の選挙。知事の応援は予定になく、ただただ驚いた。田辺さんには勇気を持って前進してほしい」と総括。支援者ひとりひとりと握手を交わした。

◆林さん無念 「準備不足」

市長選での敗因を語る林克さん=7日午後10時22分、静岡市葵区で

写真

 静岡市葵区の事務所で支援者と一緒に結果を見守った無所属新人の林克(かつし)さん(63)=共産党推薦=は「出馬表明から一カ月半では準備不足だった。東京に一極集中する中での街づくりという問題提起はできた」と述べた。

◆関係修復 歩み寄りを

 【解説】 静岡市民は田辺市政の継続を選択した。一期目に財政健全化にめどを付け、二期目に社会基盤整備の指針「五大構想」を固め、三選を目指した今回、積極的な公共投資による地域活性化を公約の柱に据えた。

 争点は明確だった。旧静岡市長の天野さんは県、つまり川勝平太知事との連携強化を訴えた。共産が推薦した林さんは現市政をハコモノ行政と批判した。

 知事は選挙戦最終日、市街地でマイクを握り、初めて天野さん支援で旗印を鮮明にした。田辺さんの政治手腕をことごとく否定してきた知事だが、自ら定めた一線を越え、行き着くところまで行った印象だ。関係修復は容易でない。

 かつて大阪府・市の「犬猿の仲」が「不幸せ(府市あわせ)」と揶揄(やゆ)されたように、県と権限が大きい政令指定都市は「二重行政」の懸念をはらむ。社会基盤整備や庁舎・病院移転で知事の指摘が的を射ている点も確かにある。

 天野さんに猛追された選挙結果も含め、宿題は残ったが、審判は下った。田辺さんは負託に応え、公約の実現に向けて信念を貫く責務があるし、知事は静岡市民の選択に一定の敬意を表すべきだ。

(静岡総局・広田和也)

写真
 

統一地方選の日程

前半戦
知事 告示3/21(木)
政令指定市 市長 告示3/24(日)
県議 告示3/29(金)
政令指定市 市議 告示
投開票4/7(日)
後半戦
一般市長、一般市議 告示4/14(日)
町村長、町村議 告示4/16(火)
投開票4/21(日)
ページトップに戻る

Copyright © The Chunichi Shimbun, All Rights Reserved.