県議選 立民が初議席
2019年4月8日
県議選は七日投開票され、午後八時から開票が始まり、順次、議席が決まった。最大会派の「自民改革会議」は引き続き過半数を占め、第二会派「ふじのくに県民クラブ」は告示前の二十二から減らした。立憲民主は初の議席を得た。
◆共産・平賀高成さん苦杯 浜松市中区
支援者にあいさつをする平賀高成さん(左)=浜松市中区で |
四議席を現職四人と新人一人の五人で争った浜松市中区選挙区で、共産現職の平賀高成さん(64)が苦杯をなめた。一方で、静岡市葵区選挙区で共産党の新人が当選したため、同党はかろうじて現有一議席を維持した。八日午前零時五十分ごろ、落選が確定すると、平賀さんは事務所でともに結果を待っていた支援者に「残念な結果になった」と頭を下げた。
前回選挙で四年ぶりに議席を奪還し、唯一の共産党議員として一期務めた。選挙戦では浜岡原発廃炉などを訴え、「政策は有権者の思いにかみ合っていたと思うが、組織の力がまだまだ不足していた」。議席ゼロは回避でき、「請願の紹介議員になり、県民の思いをきちっと議会に反映させる窓口は残った」と語った。
◆浜松市南区・飯田末夫さん 県と市、関係を再構築
ガッツポーズで喜びを爆発させた飯田末夫さん=浜松市南区で |
浜松市南区選挙区は、同市議からくら替えした自民新人の飯田末夫さん(57)が初当選を果たした。「この当選は皆さんにつかんでいただいたもの」。事務所に集まった約五十人の支援者を前に感謝を述べた。
「飯田末夫県会議員の誕生です」の一声が、事務所に響き渡った。地元凧揚(たこあ)げ会「本組」の若衆に担ぎ上げられた飯田さんはガッツポーズ。支援者も「オイショ、オイショ」と笑顔で声を上げ、会場の喜びは最高潮に達した。
定数二に対して、三人が争う構図。選挙戦では防潮堤や野球場の建設などへの取り組みを挙げ、南区の再生を訴えてきた。
市議時代は三期連続でトップ当選を果たし、最後は議長を務めた。「四期十六年の実績を評価していただいた。気持ち的には市議会の代表。県と市との関係を再構築させたい」と意欲を述べた。
◆湖西市・田内浩之さん 保守層にも浸透、大差
支援者から花束を受け取る田内浩之さん=湖西市で |
湖西市選挙区は、無所属現職の田内浩之さん(42)が地元出身の自民新人との一騎打ちをダブルスコアの差で制し、三度目の当選を決めた。午後十時半すぎに当確が伝わり、選挙事務所に拍手で迎えられた田内さんは、支援者らに「私一人の力で勝ったわけではなく、皆さんの力強い応援のおかげ」と感謝した。支援者が万歳三唱する間、深々と頭を下げ続けた。
連合静岡や農協、教育関係団体など幅広く推薦を受けた。二期の知名度に加え、地区ごとに内容を変えた街頭演説で、津波対策や道路改良などの実績と抱負を具体的に伝え続け、保守層の支持も集めた。
相手陣営は自民党の組織力で迫ったが、九千票以上の差がついた。「三期目に目指す政策を地道に訴えたのが通じたかな」と振り返り「より良い湖西市、静岡県にしていくため身を粉にして働く」と意気込んだ。
◆磐田市・江間治人さん 前回選得票に上乗せ
前回選に続いてトップ当選を果たし、支援者から祝福される江間治人さん=磐田市で |
大接戦となった磐田市選挙区は、自民現職の江間治人さん(58)が、前回選に続きトップ当選を果たした。市中心部の事務所で支援者から拍手で迎えられた江間さんは「有権者の声により耳を傾け、県政に届けたい」と感謝の言葉を述べた。
選挙戦では、地盤の磐田地区を中心に支援の輪を広げ、人口減少社会の克服や地方創生などを訴えた。一期目の実績をアピールし、無党派層にも浸透を図った。
前回選の得票に約七百五十票を上乗せしての当選に「手応えはあったが、安泰論を払拭(ふっしょく)するために、広い選挙区内をくまなく回った。有権者の声をあらためて聞くことができた」と笑顔で振り返った。
二期目に向けて、「要望が多かった沿岸部の防潮堤建設の推進や中心市街地の活性化、防災対策などに力を入れたい」と気持ちを新たにした。
◆掛川市・東堂陽一さん 8年間の実績が評価
満面の笑みで支援者の祝福にこたえる東堂陽一さん=掛川市で |
三期連続で二議席独占を狙う自民現職に、国民民主推薦の無所属新人が挑んだ掛川市選挙区は、自民が改選前の議席を維持した。百六十一票の僅差で再選を果たした東堂陽一さん(63)=公明推薦=は「勝てるかどうか半信半疑の厳しい戦いだったが、高齢者や主婦の皆さんの応援の輪が実を結んだ」と語った。
前回、前々回とも二百票以内の辛勝だった東堂さんは、年明けから市内二十三カ所で県政報告会を開くなど堅実な戦略を展開した。告示後は同級生や市議時代の人脈を生かして支持を広げた。前回まで自主投票だった公明が推したのも後押しとなった。
支援者から拍手で迎えられると、「一年半前に県連幹部から三期目はないぞとも言われたが、勝って良かった。八年間の実績が評価された」と話し「やり残した地域の要望や意見を県政で実現させる」と述べた。
◆静岡市駿河区・杉山淳さん 組織票固め激戦制す
支援者と握手を交わし、当選を喜ぶ杉山淳さん=静岡市駿河区で |
静岡市駿河区選挙区では立憲民主の新人杉山淳さん(56)が初当選し、県議会に党初の議席をもたらした。
全選挙区で唯一、主要五政党が公認候補を擁立した激戦区。夏の参院選の前哨戦と化す中、野党ではただ一人滑り込み、「当選と聞いた時には緊張した。立憲への期待があったと思う」と語った。
県職員として長年、福祉の現場で働いてきた経験から、子どもや高齢者の安全を守る政策、地震対策では「原発ゼロ」を訴えた。
出足は遅れたが、街頭演説を毎日欠かさず、知名度不足を補った。県職員組合役員で、自治労が全面支援。立民の候補者で唯一、連合静岡の支持も受けて組織票を固めた。
杉山さんは「児童虐待やニセ電話詐欺の対策を頑張っている現場と連携しながら、福祉を充実させ、よりよい地域にしていきたい」と語った。
◆袋井市・森町 女性目線の訴え 新人トップ当選
現職一人、新人二人が二議席を争った袋井市・森町選挙区(定数二)は、無所属新人の伊藤和子さん(61)=国民推薦=と自民現職の渡瀬典幸さん(56)が当選し、無所属新人の大場正昭さん(54)=自民推薦=を退けた。
連合静岡などの推薦を受けた元町議の伊藤さんは女性目線の政治を訴え、森町を中心に幅広い層からの支持を取り付け、トップ当選した。渡瀬さんは二期八年の実績を強調。自民系の市議、町議や各種団体などの全面的な支援を受けて組織戦を繰り広げ、三選を果たした。
元市議の大場さんは地元の三川(みつかわ)地区を中心に保守票を固めるとともに、子育て世代など若年層や無党派層への浸透を図ったが、あと一歩及ばなかった。
◆5人乱立の藤枝市 自民新人が初当選
定数一増が呼び水となり、五人が乱立した藤枝市選挙区(定数三)は現職二人に加え、前市議長で自民新人の西原明美さん(57)=公明推薦=が初当選した。
自民は公認候補を二人に絞り、選挙区を南北に分けて西原さんと現職の落合慎悟さん(70)=同=をそれぞれ支援。無所属現職の佐野愛子さん(63)=国民、社民推薦=は連合静岡やJAおおいがわの推薦も受け、地盤を固めた。
ともに新人で、立民の川島美希子さん(47)と無所属の池田博さん(63)は無党派層に支持を呼びかけたが、広がらなかった。
女性候補が過半数の三人に上り、二人が当選。西原さんは「女性のこまやかな部分も生かし、新しい風を吹かせたい」と述べた。
◆焼津市 定数一減の争い 自民一角崩れる
定数一減で現職三人が争った焼津市選挙区(定数二)は自民県連総務会長の良知淳行さん(54)=公明推薦=と、無所属の諸田洋之さん(52)が接戦を制した。
保守層が厚く、自民は良知さんと塚本大さん(44)=同=を擁立。国や県、市と連携してインフラ整備などを進めた実績を訴えた。二人とも危機感は高く、三度目の県議選で初めて公明の推薦を取り付けた。
諸田さんは「一政党に議席が偏ると、多様な民意を反映できない」と主張し、前回選に続いて自民の一角を崩した。
人口減や地価下落が進む焼津。良知さんは「中小企業に活力がなく、雇用がないと居住者は増えない。市とも協力し、人口減に歯止めをかけたい」と述べた。
◆富士市 唯一の女性候補 トップで5選
今回から定数が一減り、四議席を五人で争った富士市選挙区。トップで五選を決めた公明現職の早川育子さん(59)は、固い組織票に加え、唯一の女性候補であることもプラスに働いた。
約六百票差で続いた無所属現職の伴卓さん(31)は、若さや子育て政策などが広く支持を集め再選。秘書を務めた細野豪志衆院議員が自民会派入りし、応援が望めない状況だったが、連合の支援も得て乗り切った。
無所属元職の植田徹さん(69)は、六期の経験と後半の猛烈な巻き返しが奏功。自民現職の鈴木澄美さん(63)は、唯一の自民公認の強みと実績をアピールし議席を確保した。無所属新人の岡村義久さん(53)は、保守系同士の争いもあり、及ばなかった。