静岡市長選ルポ(下) 林克さん
2019年4月5日
◆労働政策訴え独自路線
陣営は、林克さんの動画を撮影し、SNSで発信している=静岡市清水区で |
生涯初めての選挙も終盤を迎え、林克(かつし)さんの演説は日増しに巧みになっている。告示日は原稿を棒読みしていたが、今や地元で生まれ育った生い立ちや現市政への批判もアドリブで織り交ぜ、よどみない。
労働組合の県幹部を歴任したとはいえ、市長経験のある他二候補に比べ、知名度不足は否めない。共産をはじめ労働組合や市民団体などから百前後の推薦を受け、鍵はいかに固定層から支持を広げられるかだ。
事務所には反原発や静岡空港の建設反対に関わってきたメンバーらも顔をそろえる。静岡高時代の同級生は、林さんを応援する歌を作って告示日に駆け付けた。選対事務局長の内田隆典市議は「人柄がいい。自信を持って市政を任せられる」と話す。
出馬表明は告示まで一カ月を切った二月下旬と出遅れた。昨秋以降、共産や市民団体から出馬を要請されたが、固辞した。天野進吾さんらが擁立を画策していた副知事が出馬すれば「野党協力ができると考えていた」からだ。
副知事が出馬を断念し、くしくも天野さんと同じ日に出馬を表明した。その天野さんとは、清水の庁舎・病院移転反対をはじめ、駿府城の天守閣再建や五大構想に否定的など、現市政への批判で訴えはかぶる。
「天野さんは自民党の重鎮。自民党そのもの」と共闘は拒否した。
違いを前面に出そうと、公約の柱には、公共事業を請け負う業者には一定以上の賃金を課す「公契約条例」の施行など、労組での活動を生かした労働政策を据えた。ハコモノ行政への反対も掲げる。
選挙カーから連呼するセリフは、当初は政策二回につき名前一回だったが、「より名前を浸透させよう」と政策一回に名前一回と変更した。街頭演説は連日八カ所以上で重ねる。若者票の取り込みを狙って、支援者らが撮った動画を会員制交流サイト(SNS)で発信している。
天野さんや田辺信宏さんと同じく、大票田であり、現市政に積年の不満があるとされる清水区を重視する。林さんは「清水では田辺さんへの反発が感じ取れる。演説を聴く市民の反応もいい」と手応えを語る。選挙カーに手を振り返してくれる市民も多いという。
葵、駿河区とは訴えを変え、清水では「田辺市政にレッドカードを」と気勢を上げる。
(瀬田貴嗣)
◇立候補者
天野 進吾 77 無新
田辺 信宏 57 無現 当選<2>=自
林 克 63 無新 =共
(上から届け出順)