静岡市長選ルポ(上) 天野進吾さん
2019年4月3日
◆最後の清水市長と共闘
最後の清水市長、宮城島弘正さん(左)から、帽子をかぶせてもらう天野進吾さん=静岡市清水区で |
四月七日に投開票される静岡市長選は、終盤戦を迎える。三候補は何を訴え、どんな選挙戦を繰り広げているのか。各候補に密着し、三回に分けて紹介する。
ともに七十七歳、熟年コンビの誕生だった。「清水駅前にかつての面影はない。にぎわいを取り戻そう」。そう呼び掛けた天野進吾さんに駆け寄ったのは宮城島弘正さん。二〇〇三年に旧静岡市と合併した旧清水市、最後の市長だ。
宮城島さんは自分の中折れ帽を脱ぎ、「ご苦労さんだね」とかぶせると、「(帽子は)はげるから」と独特の間で返す天野さん。告示後初の土曜夕、清水でのひとこまだ。
旧静岡市長、自民県議を歴任した天野さんは、清水での知名度が低い。労組出身で旧民社系の宮城島さんと本来、政治家としての毛色は異なる。県と市の関係改善を期する天野さんと、清水の復活、活性化に執念を燃やす宮城島さんの心中は一致。現職打倒を掲げ、共闘が実現した。
擁立を画策した副知事が出馬を断念し、告示一カ月前に出馬を表明した天野さん。現職に批判的な市議、母校の中央大関係者らと連携し、街頭演説や中小企業回りを続ける。清水では宮城島さんが頼みの綱だ。
最優先する公約は「県と市の連携強化」。自分が市長ならば、との自負があるだけに、現職の田辺信宏さんと川勝平太知事の不仲が歯がゆい。街頭ではたびたび「無益な仲たがいにピリオドを打つ」と口にする。
清水の病院・庁舎の移転凍結のほか、ふるさと納税の推進、教育環境整備なども公約に掲げる。大道芸ワールドカップ創設や井川スキー場の開設など旧市長時代の実績もアピールする。
政治家人生が半世紀を超えた七十七歳。加齢の影響は隠せない。街頭に立つのは一日に二、三カ所で、演説は一カ所五分程度。疲労が抜けにくいのか、陣営は「体力の温存が大事」と無理はさせない。ブログの更新頻度も下がった。
つなぎ役に徹する腹は固めている。「四年後には八十一歳。当選しても一期で降りる。政治生命を懸け次の世代にバトンを渡す」
自民を除名され、組織力に頼れず、長年の政治家生活で培った人脈が頼り。元参議院議員の海野徹さん(69)は四十年前に初めて臨んだ市議選で、天野さんに恩義があるという。「選挙の借りは選挙で返す。進吾ちゃんには『何とかしてあげたい』という根強いファンが多い」と話す。
市の高齢化率30・1%は政令市で屈指の高さ。天野さんは語る。「輝くシニアが若者のために未来の種をまく」
(西田直晃)
◇立候補者
天野 進吾 77 無新
田辺 信宏 57 無現 当選<2>=自
林 克 63 無新 =共
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