統一地方選2019

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苦境の中小企業支援を 浜松市長選

2019年3月31日

◆ものづくりのまち、浜松の屋台骨

鉄工所で切削機の調子を確かめる鈴木順一さん。「政治は零細業者にもっと目を向けてほしい」と訴える=浜松市南区下江町で

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 ものづくりのまちである浜松市のかじ取り役には、産業振興の視点が欠かせない。現場を支える中小企業の働き手は、市長選(四月七日投開票)の候補者に何を期待するのか。

 指先ほどのU字やL字、細長い板…。さまざまな形に加工した鉄材の削りかすに、依頼元からの部品の設計図が埋もれる。太字で書き込まれているのは「至急」の文字だ。

 「話が突然舞い込む上、以前よりも短納期になっている」。南区で鉄工所を営む鈴木順一さん(49)には、自動車の装置を作る工作機械のメーカーからの注文が絶えない。しかし、素直に喜べないのが本心だという。理由は「猫の手も借りたい」という人手不足だ。

 地元の工業高校で学び、金型会社に就職。二〇〇二年ごろから実家の鉄工所で働くようになった。両親は八十代になり、電話番や依頼元とのやりとりまで一人でこなす。午前六時半から十一時間近く働き、期日を守るために土曜も仕事に充てるようになった。

 部活動に打ち込む中学生の娘の応援にもなかなか行けないが、鈴木さんは「簡単には新しい人を雇えない」と二の足を踏む。人材の取り合いが続く今は、技術を一から教えても、待遇が良い会社があれば移ってしまう懸念があるためだ。

 さらに、十月に予定される消費税率引き上げで景気が後退し、仕事が減れば「雇った人の生活を支えられる保証がない」と表情は険しい。「ものづくりの裾野の広さが浜松の強み。候補者は零細業者にもっと目を向けるべきだ」

 市長選で、現職の鈴木康友さん(61)は「事業の承継支援、中小の技術を生かした産業の活性化」を掲げる。新人の野沢正司さん(69)は「中小企業振興条例の制定や、支援の抜本的な強化」、同じく新人の山本遼太郎さん(32)は「中小の担当部門の強化や弾力的な補助制度導入」などを訴える。

 リーマン・ショック後の不況、経営者の高齢化と担い手不足…。総務省のまとめでは、鈴木順一さんのような「従業員二十人以下」の市内の零細製造業者は一六年時点で三千五百八十八社と、四年間で約一割減った。

 景気の荒波にもまれてきた中小企業。部品が工作機械のどこに使われるのか、ほとんど知らされないという鈴木さんだが、「下請け」と呼ばれることを何より嫌う。「百分の一ミリ単位で、図面通り丁寧に仕上げるのが役目」。地場産業の屋台骨を支える自負に報いるような政治を望んでいる。

(久下悠一郎)

 

統一地方選の日程

前半戦
知事 告示3/21(木)
政令指定市 市長 告示3/24(日)
県議 告示3/29(金)
政令指定市 市議 告示
投開票4/7(日)
後半戦
一般市長、一般市議 告示4/14(日)
町村長、町村議 告示4/16(火)
投開票4/21(日)
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