統一地方選2019

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浜松市長選候補者 座談会詳報(上)

2019年3月27日

 二十四日に告示された浜松市長選。本紙は現職の鈴木康友さん(61)と、いずれも新人で共産党推薦の農業野沢正司さん(69)、元自民党市議の山本遼太郎さん(32)による座談会を告示前に開いた。三人は市政の課題にどう取り組み、どんな将来を描くのか。議論を三回に分けて紹介する。

(司会は萩文明報道部長。写真は右から当日の着席順、回答は指名順、文中敬称略)

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◆行政区再編

 −市は三区案を提案するが、区割りはどうあるべきか。

 鈴木 区再編は区役所の再編統合を目指し、柔軟で効率的な市の組織運営と住民サービスの向上を図るもの。廃止される区役所は行政センターなどの形で残し、建物もそのままにする。基本的な行政サービスも継続して提供する。住民自治の基本的な担い手は自治会であり、そこが揺るがない限りは区の形がどうなろうと、住民自治は全く問題ない。

 現行七区を三区にすると、七億円の財源が生み出せる。小中学校のエアコン設置や高校生までの医療費助成拡大など新たな財政需要にしっかり充てていく。

 山本 三区案には明確に反対する。「メリットはあってデメリットなし」というが、当然何事も表裏はある。住民からすれば、デメリットを説明したほうが分かりやすいのではと思う。

 日本で二番目に大きなまちである浜松市で、きめ細かな住民サービスができるのは、現状の七区だからこそ。七区をベースに発展させる方がよりよい。無駄の削減という方針には賛成だが、住民サービスが下がらないようにICT(情報通信技術)などを導入してから、見合った削減をしていくべきだ。

 野沢 七区を維持するべきだ。二〇〇五年に十二市町村が合併し、今ようやく区ごとにコミュニティーがつくられ始めた。再編は市民にとって苦痛であり、市民は要求していない。

 災害が起きた際、出先機関は復旧の最前線だ。浜松市も東南海地震の被害の可能性が高いのだから、区役所を残し備えるべきだ。区再編で七億円の財源が生まれるというが、市はバス・タクシー券廃止などで福祉の予算を削ってきた。再編は浜松の財界が要求しているもの。財界の言い分を実現するのではなく、住民本位の七区がよい。

◆水道事業のあり方

 −昨年、改正水道法が成立した。鈴木さんは上水道事業へのコンセッション(公設民営)方式導入の検討を延期すると表明したが。

 野沢 水道は命の源。民営化で利潤追求型の民間に任せるのはおかしい。導入は反対だ。ガラス張りの運営にするべきだ。

 災害で水道網が壊れた時に業者と市職員がすぐに駆け付け、修理できるようにしておく必要がある。民営では、どこが指揮権を持つのか分からない。地元業者がしっかり対応できるようにしなくてはいけない。水道水は八十万市民が毎日使うもので、毎月同じ需要が確実にある。市が運用して市内の業者に任せれば、仕事おこしにも役立つ。フランスに本社がある会社に任せることはない。

 鈴木 民営化ではなく官民連携の手法だ。官が責任を持って管理する仕組みをつくり、民間のノウハウで運営を効率化し、料金を抑える。水道事業は今後、非常に厳しい時代を迎える。膨大な管路をどう維持更新していくか。人口が減る中で節水技術は進み、料金収入は減る。必ず料金は上がるが、できるだけ市民の負担を抑えるために考えたのが官民連携。しかし「民営化反対」という議論が起きて冷静な話し合いができなくなった。ただ、排水区域や料金体系の見直し、効率的な管路の更新などはしっかり検討を始めている。

 山本 導入には断固として反対の立場だ。賛成派と反対派の意見が交わることがないのは、日本で前例がないから。行政に失敗はつきもので、百パーセント成功することはあり得ない。今回、全国に先駆けて浜松が実験するメリットはない。命の水は安心安全が大前提だから、根本的に失敗できない事例だ。

 浜松の水道事業は、浜松の水道に関わる全ての人が一生懸命蓄積した技術の結晶なので、お金がかかっても維持していく。お金をどうやって削減するかは、新技術などを導入して方法を積極的に探していく。

◆中心市街地活性化

 −JR浜松駅前や中心市街地はどうあるべきか。

 山本 浜松には大型のショッピングモールが多数あり、インターネットで何でも買える時代になった。商業で駅前に人を呼ぶのは難しい。

 では、逆転の発想で人を集めてから商業を呼ぶのはどうか。具体的には、駅前の空白地へ市役所を移転して、駅前に昼間人口四千人を集める。人が集まれば、ランチやお茶などができる。そこでやっと活性化する。百貨店「松菱」跡地でなくても、駅前のバスロータリーやアクトシティ浜松でもいい。車でないと街中に来られない公共交通システムも見直す。次世代型路面電車(LRT)も検討したい。

 野沢 市郊外には家族で遊びに行って、物を買わなくても一日無料で車を止められるような商業施設が多いと思う。浜松駅付近に車で行くと、駐車場の料金が気になってゆっくりできないのが実情で、人が集まりにくい。自転車で行こうにも放置の規制がある。中心市街地の駐車場の料金を安くして、駐輪場をもっと増やすことが必要だ。市外から人を呼ぶ努力は必要だが、まず市内の住民を中心街に呼ぶのが先で、それが基本だ。市民が気軽に行けることが、中心市街地の活性化につながると考える。

 鈴木 街全体の魅力をどうするかに尽きる。今は駅前も中心の一つという認識が必要だ。志都呂、市野、浜北に巨大モールができ、地域の中心になっている。駅前には既に集客施設がある。アクトは非常に稼働率が高い。西へ行けばザザシティがある。フォルテも遠鉄百貨店の新館になった。残念なのは回遊性がないこと。魅力ある個店を増やさないといけない。何か一つシンボリックな集客施設を造れば街が発展するということはない。一つ一つ個店を活性化して、面として機能する取り組みを地道にやる。

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統一地方選の日程

前半戦
知事 告示3/21(木)
政令指定市 市長 告示3/24(日)
県議 告示3/29(金)
政令指定市 市議 告示
投開票4/7(日)
後半戦
一般市長、一般市議 告示4/14(日)
町村長、町村議 告示4/16(火)
投開票4/21(日)
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