統一地方選2019

メニュー

はままつの深層(上) 多文化共生

2019年3月21日

◆在住外国人老後に不安

今後の暮らしを心配する原田アルナルドさん=浜松市中区で

写真

 老後をどう迎えるか。もはや日本人だけでなく、在住外国人も抱える問題となっている。

 「このまま年を取って歩けなくなったら、どうしたらいいのか。老人ホームに入れるのか」。日系ブラジル人二世の原田アルナルドさん(65)=浜松市中区=は不安げな表情を見せた。

 三十年ほど前に来日し、市内の溶接やプレス工場で働いた。六年前に病気で仕事を辞め、週三日の透析治療の日々を送る。妻とは別居状態で、日本にいる息子二人とも疎遠。年金は払ったことがなく、受給できない。今は生活保護で暮らし、アパートの家賃と光熱費を支払うと「ぎりぎりだけど暮らせる程度」のお金が手元に残る。

 浜松での生活には満足している。ただ、心配なのは十年後だ。ブラジルへの帰郷は考えていない。「老後をどうするか、市役所に相談しないといけないと思うが、暗い将来のことはあまり考えたくない」

 日系二、三世とその家族の定住や労働を認める一九九〇年の入管難民法改正で、南米などから日系人が移住して来年で三十年を迎える。二万三千人の外国人が暮らす浜松市は、全国で最もブラジル人住民が多い都市となった。

 近年、彼らの高齢化が進んでいる。二〇一七年十月時点で六十五歳を超える外国人市民は八百九十二人。うち要介護者は百人近いとされる。今後数年で高齢化は急速に進むとみられ、在浜松ブラジル総領事館のフーバルチ・エルネスト総領事も「高齢化は危惧しており、対応しないといけない」と話した。

 浜松国際交流協会の担当者は「市内には、ポルトガル語など外国語で対応できる介護施設が複数あり、今は乗り切れているが、今後は分からない」と話す。在住外国人問題に詳しい一般社団法人グローバル人財サポート浜松の堀永乃(ひさの)代表理事は「行政は外国人の要介護者がどの地域に何人いるのかを把握し、施設側の多言語対応の整備状況をきちんと確認する必要がある」と指摘する。

 市はこれまで多くの多文化共生施策を打ち出し、外国人児童生徒の教育支援などに取り組んできた。四月施行の改正入管難民法についても、行政窓口の多言語化などの対応を図る。

 外国人を早くから受け入れてきた街だからこそ、他都市より早く課題が浮かび上がる。多文化共生を全国でもリードしてきた浜松市。市のトップがこれまでの実績に恥じない施策を打ち出せるのか問われている。

   ※    ※

 浜松市長選は二十四日告示、四月七日投開票される。平成の大合併から十四年となる八十万人都市の深層を探る。

 <浜松市に住む外国人> 2018年12月1日現在の市内在住外国人は2万3145人。国籍別ではブラジル人が9320人で最も多く、次いでフィリピン人3848人、ベトナム人2564人、中国人2530人。在留資格は永住者や定住者など長期滞在が可能な人が約8割を占める。

 

統一地方選の日程

前半戦
知事 告示3/21(木)
政令指定市 市長 告示3/24(日)
県議 告示3/29(金)
政令指定市 市議 告示
投開票4/7(日)
後半戦
一般市長、一般市議 告示4/14(日)
町村長、町村議 告示4/16(火)
投開票4/21(日)
ページトップに戻る

Copyright © The Chunichi Shimbun, All Rights Reserved.