激突の構図 19年浜松市長選(下) 共産新人 野沢氏
2019年2月27日
◆「反市長」 共闘できず
国民春闘2・24静岡西部決起集会会場で参加者らと拳を上げる野沢正司氏(中)=24日、浜松市中区で |
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「ああいう形で会見を開くとは…」。一月九日、浜松市議会自民党浜松の山本遼太郎氏(32)が市長選への出馬表明をした記者会見の様子に、共産党関係者はあぜんとした。自民の県議や市議二十人が両脇を固めている。国会では水と油だが、市議会では「反市長」の同志に近い。共闘を模索してきた共産は、他の団体とともに独自候補擁立にかじを切った。
現職の鈴木康友氏(61)と山本氏の一騎打ちの構図が浮上したのは、昨年十一月。共産党の地区委員会などでつくる市民団体「住みつづけたいまち・浜松をつくるみんなの会」は、独自候補を擁立するか否かで揺らいでいた。
自民との共闘に前向きな声も多く、共産党市議団の酒井豊実団長も「上水道事業でのコンセッション(運営委託)方式導入と行政区再編のどちらかの一点でも、うちと同様に全面的に反対すれば支援はあり得る」と公言。ただ、山本氏の政策が明らかにならない限り判断を下せず、「山本氏は一体いつ会見を開くのか」と気をもんでいた。
結局、記者会見は年をまたいだ。山本氏はコンセッション方式導入について共産と同じように「断固反対」と表明。区再編では「三区案には反対。ゼロベースで考える」と訴え、まさに「一点でも合う」形となった。
だが、自民のベテランや中堅がずらりと並び、若手候補への万全のサポート態勢を演出したことで、「自民色」が前面に押し出され、共産側は拒否反応を強めた。党県西部地区委員会の幹部は「同調できる点はある。でも国政で対立しており、共闘は難しい」とつぶやいた。
みんなの会は、衆院選に二回出馬した経験のある同地区常任委員、野沢正司氏(69)を擁立。野沢氏は二月十五日の出馬会見で「安倍政権」や「アベノミクス」の批判を繰り返した。山本氏に対して「水道民営化の出どころの自民党本部に推薦を申請するのは理解に苦しむ」と言い放ち、自民との違いを印象づけた。
鈴木氏を推す与党会派の市議は「これで『反市長』票が分散する」と喜ぶ。だが、共産の狙いは他にもある。区再編の賛否を問う住民投票だ。
共産は七区の維持を掲げる。野沢氏が先頭に立って区再編反対を呼び掛ければ、住民投票の反対票を集める「旗頭」になりうる−。投票結果に拘束力はないが、議会や市長は「結果を尊重しなければならない」と条例に規定されている。
「われわれの市長候補が立つことで、市民へのアピールになる」と酒井団長。住民投票の反対を呼び掛ける運動では、これまでチラシを配る程度だったが、「現職と同じ土俵で戦える」と独自候補を擁立した意義を語る。
鈴木氏と山本氏の出馬が固まってから三カ月。出遅れ感が否めない中、いかに訴えを浸透させるか。酒井団長は自らに言い聞かせるように語った。
「戦いは始まったばかりだ」
(浜松市長選取材班)