<源流の政 木祖村議選> (7)高い投票率
2019年4月20日
村議選の期日前投票をする有権者=19日、長野県木祖村役場で |
あなたはなぜ、投票するのですか。
木曽川の最上流、長野県木祖村の役場玄関前に立ち、出てきた男性にたずねてみた。二十一日投開票の村議選(定数一〇)の期日前投票を済ませた有権者。八十六歳だという。
唐突な質問に戸惑った表情を浮かべたが、やがてこう答えた。
「投票は当たり前のことだ。理由なんてない」
無投票も多い木祖村議選。選挙戦となると、投票率は高い。
平成になってからも90%超を記録。四年前の前回は84・93%だった。村選管の担当者は「下がったのは、時代の流れでしょうねえ」としみじみ語るのだが、木曽川下流域の都市部と比べると十分に高い。七日に投開票された名古屋市議選の投票率は過去最低の32・87%だった。
役場前で、期日前投票を済ませた七十代女性は投票の理由をこう明かした。
「いろんな人に『この人に入れて』と頼まれるから、早く楽になりたくて期日前投票。もう投票しちゃったって言えるでしょ」
人付き合いが濃厚な村。選挙になると、周囲からの依頼は多いらしい。そんな環境で育ったせいか、髪を茶色に染めた会社員女性(24)も投票について「何となく義務だと思ってた。違うんですか?」と語る。
そして、会社員男性(30)はこう話した。
「住民参加の機会を大事にしないと、小さな村は成り立っていかない。選挙も同じです」
人々の結束は強く、村の男性ならごく自然と、七月の藪原祭りをはじめとする祭礼に参加する。消防団にも加わり、村の防災を担う。自分たちの代表を選ぶ選挙もまた、参加して当然と考えているようだ。
十二人が十の議席を争う選挙戦も、二十日を残すのみとなった。
現職の丸山徹三(72)はこれまで、隣の木曽町のホームセンターで買った黄色のハンドマイクを片手につじ立ちを続けた。二十日は地元の藪原地区に立つ。
「オヤジが婿養子で、濃い付き合いの親戚が少ないんだ。知り合いの多い地元で票固めしないとな」
新人の鈴木正弘(63)は、やはり地盤とする藪原地区の入り口に夕方立ち、村外の勤め先から車で帰ってくる人たちに手を振り続けた。高校時代は国体で八強に進出したバレー部員。「体を使って汗をかくことは得意ですから」。二十日も各地で手を振る。
当選ラインは何票ぐらいなのだろう。
ある候補が票読みを披露してくれた。
「投票率は80%台前半」と予想。計算上、投票総数は約二千票になるが、上位三人が千票近くを獲得するとみている。
「トップ当選は○○。親戚が百軒近くある」「二番手は□□だ。地元票が固い。ただ、親戚票の一部が△△に持っていかれそうで、この△△が三位だろう」
この三強を追う九人が、残る千票超を奪い合う展開か。最下位の十位で当選するのに必要な票を聞くと、「百二十票から百三十票だろうな」と予想した。
(文中敬称略)
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次回は二十二日に開票結果をお伝えする予定です。