統一地方選2019

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<源流の政 木祖村議選> (6)立会演説会

2019年4月19日

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 十八日午後六時。

 長野県木祖村の藪原地区にある村民センターで、立会演説会が始まった。

 二十一日投開票の村議選(定数一〇)に立候補した十二人全員が参加。順番に熱弁をふるう。小木曽地区を地盤とする現職、田上芳朗(67)が演壇に立った。

 「藪原は道がボコボコだ。みんな声を出さないかん。私は小木曽の人間だが、何でもやりますで、言ってきてほしい」

 聴衆は約百人で、立ち見も出る盛況だ。村長の唐沢一寛(70)も耳を傾けている。田上は、仲間と一緒に桜の植樹を進める自身の活動に触れ「いつか観光名所になってくれたらと思い、やっている」と語った。

 一人当たりの持ち時間十分を超え、十二分しゃべったが、おとがめなし。そもそも会場には、時間を計測している人がいない。おおらかである。

 演説会は藪原、小木曽、菅の三会場で同時に行われた。各候補者は車で三会場を巡る。一人十分の持ち時間では、自分だけでなく、仲間に応援演説をしてもらう候補もいる。質疑応答はない。

 六期目の深沢衿子(63)らによると、村議選の演説会は二〇〇三年に始まった。親戚や友人らを頼っての票集めだけでいいのかと、一部候補が声をあげたのがきっかけ。以来、無投票だった選挙でも開く。候補の共催という形式で、会場準備は各陣営の仕事だ。

 新人男性の安原千佳世(66)は、時間の三分の一を自己紹介に費やした。「全候補の中で、私がいちばん知名度が低いです」と自虐的に語り始めた。

 村出身で一橋大卒業後、農林中央金庫へ。企業再生などを手掛け、スーパー「バロー」で取締役も務めた。

 高校入学時から村を出たが、いつか故郷に戻ると、安原が四十歳の時から妻子には木祖村に住んでもらった。自身は単身赴任で働き、退職した二年前に帰ってきた。選挙に出ると決め、あいさつ回りをしたが、自分のことを知る人の多くは既に他界していた。自分は顔を知られていないとあせり気味だ。

 演説会では過去を謝罪した人も。

 元職の深沢妙子(64)は、家庭の事情で二期目途中の〇八年、村議を辞めたことに触れた。「きょうはみなさまに謝りにまいりました。ご支援を裏切る形になりました」

 新人の大久保繁子(70)は、四年前の村議選でトップ当選した夫が、日本酒を配った選挙違反で逮捕され、後に失職したことに頭を下げた。「ご迷惑とご心配をおかけしたことをおわびします。おしかりを受け、反省してまいりました」

 二期務めたが、月額十五万円の議員報酬では家族を養えないと村議選に出馬しなかった岩原大輔(36)を念頭に、議会のあり方を語ったのは木工職人の現職青木功(65)。「低報酬で生活が成り立たないと若い議員が出馬を断念した。残念でならない。村民とともに歩んでいける議会改革を進めたい」と力説した。

 木曽川最上流の村で、木に携わる人間らしく、こうも訴えた。

 「下流域の人たちに届く安心安全の水の確保のためにも、森林整備を進めましょう」(文中敬称略)

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 次回は二十日に掲載する予定です。

 

統一地方選の日程

前半戦
知事 告示3/21(木)
政令指定市 市長 告示3/24(日)
県議 告示3/29(金)
政令指定市 市議 告示
投開票4/7(日)
後半戦
一般市長、一般市議 告示4/14(日)
町村長、町村議 告示4/16(火)
投開票4/21(日)
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