統一地方選2019

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<源流の政 木祖村議選> (4)保守的な土地

2019年4月12日

立候補予定者説明会に参加した深沢衿子さん(中央右)と深沢妙子さん(同左)=長野県木祖村役場で

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 深沢衿子(えりこ)(63)と深沢妙子(たえこ)(64)。

 二人は今月二日、長野県木祖村役場にいた。十六日告示、二十一日投開票の村議選(定数一〇)に向けた立候補予定者説明会。選管担当者の話に耳を傾ける二人はもちろん、出馬するつもりでいる。

 衿子は唯一の女性現職で、今の議会で最多の六期目。障害のある長男ら三人の子を育てた母親だ。初当選は二十四年前、三十九歳のときで、木祖で戦後二人目の女性村議になった。本人によると、県のPTA組織の役員をしていて周囲に推されたという。「初当選の時、新聞に『村の政治に風穴をあけた』と書いてもらった」と振り返り、七選出馬に「女性議員の灯を消さないよう頑張る」と語る。

 妙子は元職。村の高齢者施設の介護職員を経て、二〇〇三年に初当選したが、二期目途中の〇八年に辞職した。家庭の事情で、村外に住む子どもと同居せざるを得なくなったためという。「前回は迷惑をかけた。再挑戦させてほしい」

 同じ名字の衿子と妙子。いずれも村外出身で、嫁ぎ先が親戚筋という。そして、周囲からの風当たりが少々強いのも共通する。

 衿子には多選批判がつきまとい「後継者を探せばいいのに」と語る同僚が少なくない。妙子には「村議を投げ出した」との批判が議会筋で根強い。

 元々、女性が議員になるのは容易でない村だ。

 役場に残る一九五一年以降の資料をめくって数えたところ、村議になったのは百七人。このうち女性は衿子、妙子を含め四人だけだ。しかも、衿子を除く三人は無投票でしか当選していない。

 衿子にしても、初当選した二十四年前は、十四人が十二のいすを争う戦いで十一位通過。その四年後も選挙戦になったが、最下位ですべりこんだ。その後は三回連続無投票で、六選を目指した前回が次点。選挙直後、有権者に日本酒を配った公職選挙法違反で摘発された当選者が辞職し、繰り上げで議席を得た。

 保守的な土地柄。選挙では血縁と地縁がものを言う。親戚の票固めが重視されるが、各家で発言力があるのは一般に、家長たる男性だ。

 木祖には十九の自治会があり、土地ごとの結束は強い。各会長は歴代、ほぼ男性という。「記録はないですが、知る限りでは女性会長は過去に一人だけです」(村総務課の担当者)

 衿子は語る。「私には、浮動票を集める作戦しかないのです」

 十の議席を争う村議選の立候補予定者説明会に、出席したのは十一陣営だった。現職六人、新人四人、元職一人で、女性は衿子と妙子のみだ。

 議会最年少の岩原大輔(36)=二期目=が周囲の予想に反して不出馬を決めたものの、引退する議長田上康男(73)=三期目=らが何度も出馬を説得した新人も複数いる。「定員割れはいかん」と、日ごろからあちこちに声をかけていた田上の執念が実ったと言うべきかもしれない。

 告示まで四日。木曽川最上流の里は、選挙戦突入の気配が濃くなってきた。

 (文中敬称略)

     ◇

 次回は告示後の十七日以降に掲載します。

 <地方の女性議員> 総務省によると、2018年末時点で、女性議員の比率は都道府県議会で10・0%、政令市を含む市区議会で15・3%、町村議会で10・1%。

 内閣府によると、17年末時点で、全国に1788ある地方議会のうち、女性議員がいない「女性ゼロ議会」は349あり、全体の19・5%に上った。女性のいない都道府県議会はなかったが、町村議会では全体の約3分の1が「女性ゼロ」だった。

 

統一地方選の日程

前半戦
知事 告示3/21(木)
政令指定市 市長 告示3/24(日)
県議 告示3/29(金)
政令指定市 市議 告示
投開票4/7(日)
後半戦
一般市長、一般市議 告示4/14(日)
町村長、町村議 告示4/16(火)
投開票4/21(日)
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