統一地方選2019

メニュー

<源流の政 木祖村議選> (3)自立の誇り

2019年4月11日

写真

長野県木祖村の集落。後方には木曽川下流域の水がめ、味噌川ダムがある=本社ヘリ「おおづる」から

写真

 長野県木祖村の村議、古畑節行(さだゆき)(75)=三期目=は三月二十日、地元・藪原地区の旧中山道沿いにある集会所を訪れた。

 自らが会長を務めるグループで、地域おこしのイベントなどを企画する「お休み処(どころ)ときわ」の定例活動日。会員二十人に「やはり、立候補します」と告げた。

 四月十六日告示の村議選(定数一〇)への出馬表明。当初は引退宣言していたが、それを撤回した。

 引き金は三月十九日の定例会最終日に、岩原大輔(36)、唐沢重明(64)の二期目コンビの不出馬を知ったことだ。議長の田上康男(73)=三期目=も引退を決断。改選後の議員の大半は、新人や二期目になる。現在は月額十五万円の議員報酬アップの検討など、課題も多い。「ベテランの自分がやるべき仕事がある」と思い直した。

 そもそも、古畑が議員になったのは、木祖村が二〇〇四年に、周辺町村と合併しないと決めたことがきっかけだ。

 国が主導した「平成の大合併」。当時、助役だった現村長の唐沢一寛(70)によると、〇二年ごろ、役場内には「合併やむなし」の空気も漂っていた。「合併しないと、国からもらう地方交付税が減らされると言われていた。大きな自治体になった方が安心だろうと」

 村内十九カ所で順次、懇談会を開き、住民が議論を重ねるうちに、潮目は変わった。

 木曽川最上流の木祖村には、名古屋市など下流域の水がめ、味噌川ダムがあり、年数億円の固定資産税が入る。合併しないと存続できないほど、貧しい村なのだろうか。

 仮に合併して新しい自治体が誕生すれば、人口規模や地理的条件からみて、中心地は木曽福島町だろう。木祖は周縁部になる。うちの村は源流の地であることを誇り、木曽川の祖「木祖」を名乗ってきたのではなかったか−。

 〇四年六月の住民意向調査で「合併に反対」は66%。「賛成」の二倍に上り、針路は決まった。

 古畑、田上らは住民として、合併の是非を議論した懇談会に加わったメンバーだ。〇七年の選挙で、初当選している。

 自立の道を選んだのだから、にぎわいや交流の場をつくるのも役場任せにせず、自分たちでやれることをしようと「お休み処ときわ」も生まれた。菓子作りや、子ども向けの流しそうめん大会といったイベントに人々が集う。

 合併しない選択から十五年。人口減は続き、六十五歳以上が占める高齢化率は当時から10ポイント増えて40%超になった。若者を定着させるのは容易でない。

 今年は村が誕生して百三十年。自立を選んだ平成の大激論を知る人たちはみな、「あの時のような熱気で、村の節目を盛り上げたい」と語る。

 古畑の四選出馬表明の一時間半ほど前。お休み処ときわの会員たちがいる集会所を訪れ、「出馬します」とあいさつした別のベテラン村議がいた。

 古畑の四軒隣に住む唯一の女性村議、深沢衿子(えりこ)(63)=六期目=だ。

(文中敬称略)

 <平成の大合併> 国の主導で1999年から2010年まで進められた市町村合併。全国の市町村は99年3月末に3232あったが、10年3月末には1727となり、ほぼ半減した。少子高齢化が進むなか、市町村の財政基盤を強化するのが目的。合併を選んだ自治体の都市基盤整備の財源には、借りた額のほとんどを国が肩代わりする合併特例債が認められた。

 

統一地方選の日程

前半戦
知事 告示3/21(木)
政令指定市 市長 告示3/24(日)
県議 告示3/29(金)
政令指定市 市議 告示
投開票4/7(日)
後半戦
一般市長、一般市議 告示4/14(日)
町村長、町村議 告示4/16(火)
投開票4/21(日)
ページトップに戻る

Copyright © The Chunichi Shimbun, All Rights Reserved.