統一地方選2019

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<源流の政 木祖村議選> (2)なり手を探して

2019年4月10日

長野県木祖村議会の議場。人材確保のため、報酬増を訴える議員もいる=長野県木祖村で

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 長野県木祖村議会の議長田上康男(73)=三期目=に、悪い知らせは重なった。

 議会最年少の岩原大輔(36)=二期目=が、月十五万円の議員報酬の低さなどから家族を養えないと考え、四月十六日告示の村議選(定数一〇)に出馬しないと田上に告げたのが、定例会最終日の三月十九日。さらに、村の総務課長から議員に転じた唐沢重明(64)=二期目=からも同じ日、「いろいろありまして」と不出馬の決断を聞かされた。

 地元の自治会長の体調がすぐれず、唐沢が引き継ぐことになった。各種行事への出席など忙しい役。家族にかつて「議員は一期でやめる」と約束した経緯もあった。

 田上にとって、唐沢は同志だった。

 若い岩原の生活の窮状も知る田上はかねて、議員のなり手不足解消のため、報酬を増やしたいと考えていた。昨年四月、議員五人による報酬などの検討会をつくり、座長には唐沢が就任。会には岩原も加わった。

 月十五万円は、大卒の村職員の初任給より低い。一方で年百三十日は拘束される。経済的、時間的に余裕のある人が、見返りを期待しないで村民に奉仕する。そんな議員像を前提としたような金額である。

 実際のところ、議員十人のうち子育て世代は岩原のみ。他はみな六十代以上だ。人口減が続く村の未来のため、若い人も政治を担ってほしいと田上は考えた。

 唐沢は検討会座長を務めながら昨春以降、議会だよりに、議員の仕事の意義や選挙のノウハウを伝える四回連載のコラム「村会議員になろう」を書いた。

 村の職員は、三千人近い村民の要望を全て承知しているわけではないとして「住民と行政の差を埋めるのが議員」と記述。村提案の議案を読み、質問し、賛否を決める流れを解説した。「議員一人一人に大きな権限はありませんが、多数決で出た結果にはとても大きな力があります」とも訴えた。

 選挙のノウハウは詳細だ。「親類、友人知人から票を積み上げるのも作戦の一つ」「選管には選挙権のある人の名前が全て書かれた選挙人名簿があり、閲覧できる。選挙はがきを出すときなどに必要」−。

 議会は三月三日、なり手不足問題に詳しい新潟県立大准教授の田口一博を招き、講演してもらった。「議会が機能しないと、村はよくなりません」。村民百人超が耳を傾けた。

 唐沢らの検討会が固めた、新たな報酬原案。四月の改選前の議会が編集し、改選後に配布される議会だよりで公表する。引き上げるかどうかの判断は、新しい議員に委ねる。

 ただ、検討会の中心だった唐沢や岩原は議会を去る。田上も三期を区切りに引退する。現職議員の間には「報酬が少し増えたぐらいで、若いなり手が来るのか」と懐疑的な意見もあり、先行きは見通せない。

 唐沢、岩原の去就を知り、自身の引退を撤回して四選出馬を決めたベテランがいた。田上と問題意識を共有する前議長、古畑節行(さだゆき)(75)である。(文中敬称略)

 <地方議員の報酬> 総務省の2017年4月時点のまとめによると、全国の町村議の平均報酬は月額21万3738円。市議(政令市除く)の40万6134円、都道府県議の81万183円と比べ、低さが際立つ。

 全国町村議会議長会が11年に実施した町村議への意識調査では、「議員報酬が低い」と思う人は56・8%で「適正」とした31・7%を上回った。1990年の同種調査では「適正」が43・9%で、「低い」とした37・6%を上回っていた。

 

統一地方選の日程

前半戦
知事 告示3/21(木)
政令指定市 市長 告示3/24(日)
県議 告示3/29(金)
政令指定市 市議 告示
投開票4/7(日)
後半戦
一般市長、一般市議 告示4/14(日)
町村長、町村議 告示4/16(火)
投開票4/21(日)
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