<点検・信州の議会> (3)休日議会
2019年3月14日
いつもは地元紙の記者ら数人しかいない傍聴席を、十七人の町民が埋めた。昨年十二月九日の日曜日に開かれた阿南町議会の定例会。学生服姿の若者も見つめる中、登壇した町議九人の一般質問は、いつにも増して熱を帯びた。
阿南町議会は二〇一六年から、十二月定例会の一般質問を日曜の昼間に行う。住民により身近な議会を目指す狙いで、県内で休日に本会議を開催するのは珍しいという。七十代のベテラン議員は「傍聴に来てくれた人に関わる質問をしようと思うようになった」と引き締まった表情で語った。
阿南町議会が議会改革に取り組むきっかけとなったのは、無投票当選となった一五年四月の前回町議選。町制が始まった一九五七年以来初めての事態だった。「議会や町政への無関心が進んでいるのでは」と危機感を抱いた二期目の勝野猶美議員(72)が、議長に就任した際の所信表明で議会改革に乗り出すと宣言。同年十月、議員全員による議会活性化協議会を発足させた。
協議会が最初に手掛けたのは、低年齢層へのアプローチ。将来に議員のなり手となる子どもらに町政と向き合う知識と場を提供しようと、町内の中学校や高校で出前講座を開き、生徒と町議がひざをつき合わせて町政について語り合った。一六年六月定例会では、小学生と高校生の計六十五人が授業の一環で傍聴した。
県内外の先進的な議会も視察し「まず議会活動を知ってもらおう」と会社勤めの人や学生も傍聴しやすい休日議会の導入を決めた。
議会活動をPRする議会だよりの改革にも着手。写真や見出しなどレイアウトを工夫し、委員会審議の議論を詳細に記すなど内容を充実させた。
住民に開かれた議会を模索する試みが評価され、一七年二月には全国町村議会議長会から表彰された。今期で最後となる二十三回目の協議会では、改選後の継続を望む意見で一致した。
県選管によると、一五年の統一地方選で、市町村の首長選が九、議員選が三十四あり、無投票がそれぞれ六、十一だった。地方自治に詳しい山梨学院大法学部の江藤俊昭教授は、議員のなり手不足の解決策について「議会の魅力を創り出し、議員活動を住民にちゃんと知らせる必要がある」と指摘する。
勝野議長が「なり手不足解消のためにはまだまだやれることがある」と語るように、協議会の試みは第一歩にすぎない。「一番必要なのは議員の意識改革かもしれない」。さらに開かれた議会を目指し、常任委員会や全員協議会の公開を求める声も上がるが、公開に抵抗を感じる議員はまだ多い。