統一地方選2019

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<点検・信州の議会> (2)議員報酬

2019年3月13日

 「『議員になってもらえれば』という人は複数いたがいずれも駄目だった。誰か手を挙げてくれる人がいればいいが、もう時間がない」。四月三十日の任期満了で引退する意向の諏訪市議が嘆いた。

 同市では、各地域で候補を立てて支援する慣習が今も残る。地元の声を市政に届ける現職が退くなら後継者が必要になるが、この市議の地域では擁立が難航している。

 市議会は二〇一七年十二月、議員のなり手不足などを理由に報酬引き上げを求め、金子ゆかり市長に「議員報酬及び特別職給料審議会」の開催を要請。「幅広い住民の意思を反映させるためにも多様な人材が立候補しやすい環境づくりが重要。若い世代や女性が議員になっても生活設計できる報酬が必要」と訴えた。

 正副議長を除く議員は、月額報酬三十四万九千円と期末手当を合わせた年収が五百八十二万円を超える。これとは別に月一万円の政務活動費も支給される。審議会は一八年十月、報酬額の据え置きを答申。四月に控える市議選後に改めて検討すべきだとした。

 審議会長の岩波寿亮(としあき)諏訪商工会議所会頭は「年収は決して低い金額でない。経営者の立場で言えば、これだけもらえれば、うらやましいと思われるのでは」と引き上げに慎重な姿勢。市議会の金子喜彦議長は「仕事に見合った報酬があれば張り合いも出る。報酬引き上げは、議会活動を前進させるための手段」と反論する。

 議員のなり手不足の課題は伊那市議会も同じ。一八年四月の前回選で初めて無投票となり、市民の「関心のなさ」に危機感を抱いた黒河内浩議長が議長選立候補の際に掲げた“公約”が「魅力ある議会づくり」だった。

 全二十一議員で検討会を組織。今年一月に結果をまとめ「報酬が低いのが一因」と白鳥孝市長に審議会開催を要請した。月三十六万五千円の報酬を増やして魅力を高め、候補に名乗り出る人を増やす狙い。増額には市民の風当たりが強いと見込み、黒河内議長は「あくまで白紙での要請。報酬の妥当性を審議していただきたい」と強調する。

 市議会が実施した市民アンケートでは、地域推薦の慣習から「共倒れは最悪。地区として複数人の立候補を目指せない雰囲気がある」となり手不足は報酬ばかりが原因でないとの指摘もあった。市議の間でも「定数を減らさないと納得が得られない」と市民感情の悪化を恐れる意見が根強い。

 総務省の研究会が昨年三月、町村議のなり手不足について検証した報告書では規模が小さい自治体ほど報酬が低くなり、生計が立てにくい傾向を指摘。報酬を抑えつつ、逆に定数を増やして若者や女性らを含めた多様な住民意見を反映させる選択肢などを示した。

 どんな議会や議員が望ましいか。報酬増だけに縛られない幅広い議論が求められる。

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統一地方選の日程

前半戦
知事 告示3/21(木)
政令指定市 市長 告示3/24(日)
県議 告示3/29(金)
政令指定市 市議 告示
投開票4/7(日)
後半戦
一般市長、一般市議 告示4/14(日)
町村長、町村議 告示4/16(火)
投開票4/21(日)
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