<点検・信州の議会> (1)県議政務活動費
2019年3月12日
「政務活動費(政活費)を減額する取り扱いは二〇一八年度末まで、とする」。昨年十月の県議会議会運営委員会。高橋岑俊委員長が同六月から議員同士で検討してきた結果を議長に報告し、了承された。議員一人当たり月二十九万円の政活費を今年四月から条例上の月三十一万円にする方針が決まった。
議員報酬とは別に交付される政務活動費。会派活動にかかわる資料の印刷や交通費、研修参加費、事務所借り上げ料や補助職員の給料など使い道は幅広い。県の新年度当初予算案では、前年度当初比約千三百万円増の約二億一千万円が計上された。
条例では、議員一人当たり月三十一万円となっている。県議会では、厳しい財政状況などを踏まえて〇三〜〇五年度、時限的に二万円低い二十九万円に抑え、その後も毎年条例を改正して減額措置を続けてきた。
四月からの減額措置取りやめは「政務活動の充実」が狙い。県議らは非公開の会合で検討してきた。選挙権年齢の引き下げで政治活動の幅が広がったほか、十月に予定される消費税率引き上げ、他県の水準より低いことなどが理由に挙がったという。
政活費を巡っては、富山市などで不正利用が相次ぎ、厳しい視線が注がれる。県議会は〇二年に収支報告書などをホームページに載せ、〇三年には領収書を全面公開した。県議らは「全国の先駆け」と胸を張ってきたが、透明性の確保では後れを取る点もある。
その一つが、県議の任期満了に伴い、八日の県議会最終日に審査未了で廃案になった陳情。政活費の領収書をインターネットで公開するよう求める内容で、一六年に出され、定例会のたびに結論が先送りされた。
領収書は県庁で閲覧でき、情報公開請求をすれば一枚十円で個人情報を伏せた資料が手に入る。全議員分は年間で一万数千枚に達し、開庁時間に全て調べるのは困難。資料を全部入手すれば十万円以上かかる。
陳情は審議されたこともあるが、「サーバーの使用料が多くなる」「業務委託料が新たにかかる」などと消極的な意見が相次いだ。
大阪府や兵庫県などネット公開する自治体は広がりつつあり、陳情書を出した全国市民オンブズマン連絡会議事務局長の新海聡弁護士は「ネット公開で疑惑のある支出が分かり、議員もいかに調査研究したかPRしやすくなる。県民と議会を近づける機会にできたのに廃案は残念だ」と語る。
領収書のネット公開以外にも課題はある。議員への還流との疑念を持たれないよう「親族または議員が役員となっている団体などへの(事務所)賃借料の支出は不可」とする山形県議会など、同族企業などへの充当を制限する自治体もあるが、長野県議会にはない。
「必要があれば改選後に再び議論すればいい」。十六年続いた減額措置の中止について、県議の一人はこうかわした。選挙戦では、実質的に引き上げられる政活費への姿勢も問われる。
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四年に一度の統一地方選が迫ってきた。前半戦の県議選は四月七日、後半戦の市町村議選と首長選は同二十一日に投開票される。私たちの暮らしを左右する政治決戦を前に、信州の議会が抱える課題を四回に分けて点検する。