「投票行こう」公平さ注意 低下続く投票率
2019年4月20日
市議選への投票を呼び掛ける啓発活動で、有権者にクッキーなどを配る大学生ら=金沢市香林坊で |
近年、投票率の低下が進む統一地方選。前半にあった石川県議選の投票率は一部を除いて軒並み低下し、県全体では過去最低を更新した。二十一日投開票の市町議選も低投票率が懸念され、金沢市議選では市民らが投票率アップに向けた独自の取り組みを始めた。ただ金沢市選管は「特定候補への便宜ともとられかねない」と慎重な見方を示す。投票率向上と公平性・中立性のはざまで、難しい問題を投げ掛けている。(統一地方選取材班)
店や個人「草の根」広がり
自分たちの未来は、自分たちの手で−。キャンペーンを展開しているのは金沢市内のスイーツ販売店。44・72%で過去最低を七回連続で更新した県議選の低投票率を憂い、対策を考えた。客は店の看板を携帯電話で写し、ツイッターなどの会員制交流サイト(SNS)に画像とともに「選挙に行きます」と投稿。店で画面を見せればプレゼントがもらえる。
十〜二十代の客層が多く、あくまで若年層の関心を高めてもらうのが目的。「特定の候補者を支援するものではない」とも明示しており、社長(32)は「若い人に発信してもらうことで、さらに波及していけば」と期待を込める。
一方、金沢市内で働く女性(33)は、市議選の立候補者四十三人全員のホームページ、フェイスブック、ツイッターなどのリンク先をまとめ、自身のブログに投稿した。
きっかけは候補者の政策をインターネットで調べた際、ひと苦労したため。女性は「選挙公報だけでは見えてこない、日ごろの活動なども見られる。一つにまとめれば簡単に比較もできる」と説明する。
選管 候補への便宜警戒
こうした民間や個人の自主的な取り組みに、金沢市選管と県選管は「仮に陣営に関わる人がやっていれば選挙運動になる」と警戒する。選管は投票環境の見直しや街頭啓発に取り組んでいるが、それが直接、投票率と結び付くかは不透明だ。
全国の一部地域でも投票と飲食店などの割引サービスを組み合わせた事例がある。「投票済み証明書」を発行する選管もあるが、金沢市選管の場合、金銭の授受など悪用されるケースを懸念して出していない。「そもそも投票は本来、個人の意思でされるべきだ」との見方を示す。
明るい選挙推進協会(東京)の関係者も「公平・中立性の担保は前提条件であり、法の下で選挙が執行されるのは当然だ」としつつ「投票率向上への特効薬がない中でそれぞれが頭を悩ませ、知恵を絞っている。海外では投票者へのインセンティブ(特典)もあれば、義務化もある。今後議論していく必要があるだろう」と指摘した。