<市長選ルポ> (下)日進市
2019年4月19日
「私は政策の近い人を応援する。後継は近藤裕貴以外にいない」。十七日夜の近藤陣営の総決起集会で、現職市長の萩野幸三(77)が断言した。
「後継指名はしない」としてきた萩野が、今は近藤への支持を公言する。理由の一つは、自身が計画を進めてきた「道の駅」の整備計画。用地買収を除いて十四億円をかけて整備する事業で、国が昨年度に全国から十五カ所を選んだ「重点道の駅」に入った。
道の駅は、先に立候補を表明した島村が公約で「凍結」を掲げて、争点に浮上した。隣接する東郷町でも昨年五月、道の駅の計画を争点に町長選が行われ、反対を訴えた現町長が初当選を果たしていた。
「名古屋と豊田のベッドタウン」との印象が強いこの地域で、道の駅の計画が持ち上がるのは、まちづくりに特色を出したい行政に、魅力的に映るからだ。
「道の駅は単なる物販や休憩施設ではない。防災や子育て支援の拠点も含めた施設」。現市政の継承を掲げる近藤は、政策面の主張では道の駅に時間を割く。「国も支援する事業に相手方の主張は『凍結』。私は残念に思う」とし、自民、公明から推薦を受け、「国、県とのパイプ」を強調する戦術も展開する。
県内初の女性市長を目指す島村は、議員時代から「市民派」を掲げ、市政に是々非々の対応をしてきた自負がある。「総額は二十億円以上。集客が五十万人を下回れば赤字だ。日進にはリスクが高い」。住宅街でのつじ立ちを続ける中、道の駅に対する不安を率直に語りかける。
ボランティアが支える「ネットワーク型の選挙」を自称し、政党の支援を受けない。集会を開く従来の選挙手法も取らない。
「道の駅より、教育や福祉だ」。流入が続く若い子育て世代層を照準に、支持政党なしとする票の掘り起こしに取り組む。
(文中敬称略)